日本より断然進んでいる中国のキャッシュレス化の立役者、アントフィナンシャルの出自からこれまでをまとめた一冊。「アリペイやってるとこでしょ」とだけ思っていたら大間違い、という話でした。 スタートこそアリババ上での売買に伴う信用保証からであるも…
現役の専業農家の著者が農業の現実を解き明かしつつ、農業をめぐる各種提言や昨今の改革に批判的検討を加えている一冊。これだけ農地が余ると言われ続けていると、いつかどこかで関わることもあるかもしれないとなんとなく考えていたので、興味を持って読ん…
AIの勃興・隆盛が、憲法で規定されている原理や理念に投げかけている問いについて考察した本です。AIやビッグデータ関連の分野ではおなじみの選挙を含むターゲティング広告や信用スコアの話から、珍しいところでは教育・裁判制度まで広く取り上げられていて…
最新のデータサイエンスとSNSが合わさって、世論形成や人々の投票行動にどのように影響を与える可能性があるかを紹介した本です。著者ご自身がドイツ在住でいらっしゃるということもあって、ネット選挙最先端のアメリカに加え、ドイツやヨーロッパの事例も取…
インターネット体験のパーソナライゼーションとその弊害について説いた一冊。 検索、ページ閲覧、クリック、いいね!、購買などなどインターネット上のあらゆる振る舞いはトラッキングされ、データとして蓄積され、分析され、画面の向こう側から見た「わたし…
ソーシャルメディア、世論形成それぞれにまつわるトピックやケーススタディを広く取り揃えている一冊です。 誰もが発信者になれるソーシャルメディアが発達したことで、旧来のマスメディアが情報伝達を寡占する時代が終わり、クロスメディアが当たり前となる…
ニッポン複雑紀行で編集長を務め、在留外国人や移民のルーツを持つ子どもたちの様子をリポートしてきた望月優大さんの手になる「移民」についての新書が出たので読んでみました。 本書で望月さんは、留学、技能実習、日系人など、日本が本音(=雇用調整しや…
オランダのメディアの特派員として中東に駐在した著者が、報道の現場で起きていることを包み隠さず明かしている一冊。ポスト・トゥルースが騒がれだしたのは、トランプ大統領が誕生する前後くらいからのことでしたが、それよりもはるか昔からメディアが伝え…
「水の未来」や「在来種は本当に悪者か?」の著者、フレッド・ピアスの新刊が出たので読んでみました。読んだ過去2冊もそうでしたが、フレッド・ピアスは切り口というか視点の設定がとっても素晴らしいです。 本書の原題は"Fallout"。核兵器の使用後や放射能…
元日の『日本のジレンマ』スペシャルでお見掛けして、すごく高いコメント力・モデレート力でどんな方だろう?と気になっていた與那覇潤さんの著作3冊「知性は死なない」「中国化する日本」「日本人はなぜ存在するか」を読みました。 3冊通してざっくりまとめ…
これをやっておけば一生安泰という道がなくなり不確実性が増す一方の未来を生きる子どもが、将来成功を収めるために何が必要なのかを考察した本。2冊セットで読むことをお勧めします。 著者の主張の眼目は概要以下の通りです。 ・子どもの将来の成功のために…
神様のカルテシリーズ、3巻まで進んだ後に発刊された本書。一止たちが医学生だった頃や、研修医時代など、シリーズが始まる前の前史を綴った短編集でした。 他3冊と同じく、本書もやはりストーリー・文章ともに素晴らしかったです。 シリーズのタイトルをそ…
昨日、公開初日に観てきました。 破壊が続く故国シリアを逃れ、復興の建設ラッシュに沸くレバノンで働く移民労働者の苦難を描いた映画です。 配給会社や観客の方からは詩的な映像美との賛辞が送られてましたが、自分としてはぴんと張り詰めた画という印象で…
「スナック」とはいかなる社会空間かを、法学・政治学・文学等の研究者たちが各々の専門分野の視点から考察した一冊。スナックがどのような法規制の下今あるような業態にたどりついたのか、また開業・経営に当たってはどのような届出や基準を求められるのか…
なぜ人は美容整形を受けるのか? 一般的には社会規範(美しくあるべき、という社会〔特に異性〕からの圧力)によるという見方と、当該個人が身体改変を通してアイデンティティを再構築しようとしているという見方がなされてきました。 しかし著者自身の先行…
家業を畳みに地元に帰った主人公が気付くと実家の再生・地元の活性化に奔走するというストーリー仕立てで、地域再生に取り組む上での心構えや留意点を伝えている本。ストーリー自体は若干出来すぎの感もするものの、その分展開が早くてすいすい読み進められ…
大学院の研究のため、大学のあった京都から石川県の研究所に1人”飛ばされた”守田一郎が、大学の後輩、先輩、元家庭教師の教え子らに送った手紙でストーリーが進んでいく書簡体の小説。書簡体小説は湊かなえの『告白』以来でしたが、どちらも傑作で、面白い小…
なんと今や世界中の砂浜の粒の数より情報量が多いそうである。そうなると、単発型のの広告施策はおよそターゲットに届きにくくなっている。だからこそ、今後のセールスは既に関心を持ち、好ましく思ってくれているファンをベースに行うほうが有効である。(…
ヤンキーと呼ばれる子たちはどのように学校生活を送り、どのように労働市場に出ていくのか ー 著者は実際に高校で<ヤンチャな子ら>と三年間を共に過ごし、中退・卒業後もインタビューを続けて分析を行った。 これまでのヤンキーについての研究は、ファッシ…
本書の初版は2001年刊。折しもインターネットが一般に普及しようかという頃に、インターネットそのものよりもそれを介して何ができるか、人と人との関りがどう変わっていくか、インターネット的なあり方や思考法、表現法について論じた本。 インターネット時…
ついに希望が訪れたと思われていた「アラブの春」は、なぜこんな結末になってしまったのか?イラク、リビア、シリア、エジプトに生きる6人を透かし絵にして、その背景に迫った一冊。 ヨーロッパ各国による植民地支配からの独立に際し、民族の多様性を考慮す…
言説を生み出す知識人は差別を糾弾・排撃する側にも、助長する側にもなりうる。 オリエンタリズムの著者であるエドワード・サイードの「知識人とは何か」と、その後継者と目されるハミッド・ダバシの「ポスト・オリエンタリズム」に通底する問題意識はそこに…
イスラムと言えば発祥の地でもある中東のものというイメージが強いのではないでしょうか。スンニ派とシーア派、そしてワッハーブ派など、宗派が各国・各勢力間のパワーゲームの大義名分にも使われ、それぞれどんなものなのかについての解説も折に触れ目にす…
世界がだんだん「異なるもの」を受け入れる余裕をなくしていっているんじゃないかー直感的にそう感じていて、実際どんな事態がどう起こっているのか知りたくて、差別についての本を2冊読みました。 一冊目は、ドイツ人ジャーナリストのカロリン・エムケが著…
ヨーロッパに「発見」されたアフリカの歴史を、アフリカ側から捉え直して解説した一冊。 世界史の資料集でチラッと目にするだけだったアフリカに存在していた諸帝国がどんな経済力を持っていて、それがどういう経過をたどってヨーロッパ諸国に組み伏せられて…
「フラット化する世界」の著者が、今現在世界に働いているダイナミクスとその影響、それにどう対応していくべきかを考察した本。タイトルには加速度的に変化が起きフローが激しい今だからこそ、ちょっと立ち止まって考えてみようという意味が込められている…
パリで暮らす若い夫婦の幼い子ども二人が殺害された ー子どもの世話はもちろんのこと、家事のサポートも存分にこなす完璧なはずのベビーシッターに。なぜこんな痛ましい事件が起きたのか、キャリアも含む両親それぞれの日常と、ベビーシッターの感情のすれ違…
出生前診断の誤診(医師による見落とし)により障害を持つ子どもが産まれ、合併症からわずか1か月半で苦しみながら死んでいくという経験をした夫婦が、誤診をした医師を訴えた。産まれた後の医師の手のひら返しの対応に憤り、子どもに謝ってほしいという思い…
見知らぬものとのコミュニケーションがどうやって成立するのか?宇宙人とのファースト・コンタクトという極端にも思えるケースを想定し、相互行為論に基づき考察している一冊。 相互行為論というものに初めて接したのですが、哲学、人類学、言語学などまたが…
吃音、いわゆるどもりとはどういった現象なのかを当事者である著者が解説している本。 どもりにも同じ音が続けてでる連発、言い出しの言葉がでない難発、どもりが起きそうな予感に備え言葉を置き換える言い換え 、と複数パターンがあることを初めて知りまし…