『21世紀の資本』+『里山資本主義』=?

解説本が出され識者が批評を続けるトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』と、2014年の新書大賞1位をとった藻谷浩介氏の『里山資本主義』。

かたや金融、かたや里山と、かけ離れたトピックを扱っているようですが、共通する主張・示唆がなされているように見受けられて興味深かったです。

それは、

1.人口増加の鈍化(もしくは人口減少)の下では経済成長率は低下する。

2.それに伴ってフローである給与所得は伸びにくくなる。

3.相対的にストックしてある資産から得られる利益の比重が重くなる。

という3点。
※藻谷氏については前著の『デフレの正体』や、山崎亮氏との対談『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』での主張も一部含みます。

 扱っているのがピケティ氏の場合は不動産や金融的な資産、藻谷氏の場合は社会的な関係性(ソーシャル・キャピタル)や地域で眠っている資源(森林など)、といった違いはあります。ただ、両者ともこれら資産の効果が人々の『豊かさ』に及ぼす影響が大きいという主張は共通しているのでは、と思いました。

ざっくりまとめて、ピケティ氏は金融資産から得られる利子所得が富裕層が富裕層たるゆえんであり、藻谷氏は社会関係資本や地域の休眠資源の活用を通じた余分な支払いの減少がサブシステムとして働いていると(経済成長率は下がって見えても)暮らし向きはよくなる、と述べています。

 

言ってしまえば、お金は究極的には何かと交換するための手段。
その手段を手に入れるために給与所得を上げようとするには、ものすごい努力して一生懸命働かなくちゃいけない。(多分色んな犠牲と多少の運も必要かも?)
だったら他の方法でお金を増やすことや、お金じゃない媒介手段を増やすことも働くことと同じくらい真剣に考えた方がいいんじゃないか?

真逆なオプションのようですが、そんなことを考えさせられる一連の読書でした。