読了。
「建国の父ムスタファ・ケマルは、瓦解するオスマン帝国からトルコ共和国を誕生させるため、西欧列強の圧迫を跳ね返し、社会・経済的に過重なくびきとなっていたイスラムを脱し、近代国民国家にふさわしい国土・国民・社会・経済基盤を築くという偉業をわずか20年足らずのうちに成し遂げた。」(134字)
(伝記ものを要約すると味気ないなぁ。。。)
酒井啓子さんが院生の時に薦められたというブノアメシャンの中東三部作の第一作目です。
第一次世界大戦をトルコの視点から眺めるとこういうことになるのかぁというのが一番印象に残りました。
国民国家を新しく作るということは、とっても細い隘路を全速力で走りぬけるような厳しさがあるんですね、やっぱり。それだけの困難であれば独裁的な剛腕のリーダーシップが有効な場合もありえるんでしょう。
まだ100年も経たない前にそんな経験をしているからこそ、ヨーロッパともぎくしゃくするし、ギリシャ・アルメニアとの対立もくすぶるし、クルド人には厳しく当たるし、世俗派はイスラム主義を警戒するし。トルコにまつわる現在(も)見えてくる色んな現象の根っこがそこにあったんだな、という発見です。
トルコの「同じルーツだ」という意識が中国領内のトルコ系住民の居住地まで拡がっていたことがあったそうで、今もどう残っているのか、それが具体的に形や行動として出てくることがあるのか、ちょっと注目して見てみたいと思います。