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「保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで」(著: 宇野重規)を読みました

トランプ大統領誕生の今日読了。
著者の意気を感じさせる、一本筋の通った良書でございました。

保守主義とは個人の自由を守る制度・慣習の蓄積を重んじ、漸進的変化を志向する政治姿勢である。個人の自由を守る制度が明治期に創設された日本では、何を守るかという保守主義の根幹が定まっていない。ライバルの進歩主義が衰え優位に立つ今、保守主義は歴史から何を汲み、守るか理念を定めるべきだ。」(140字)

マジックワードとして頻出する「保守主義」。
これは正確なところ何なのかモヤモヤしていたのですが、やっと腹落ちしました。

著者曰く、元々楽天的な進歩主義を批判するものとして生まれ発展していった保守主義は、①具体的な制度や慣習を保守し、②そのような制度や慣習が歴史のなかで培われたものであることを重視するものであり、③自由を維持することを大切にし、④民主化を前提にしつつ、秩序ある漸進的改革を目指すものであるとする。

だからこそ、王政から自由を勝ち取り制度として定着させた歴史のあるイギリスでは、国王の親政に対する反発や、抽象的な理念に基づき既存体制の全否定と転覆を企図するフランス革命の否定につながり、貴族制の歴史を持たず自由な移民の国として始まったアメリカでは大きな政府への反対、という形で保守主義が立ち現れた。

翻って日本は、そもそも自由のための制度がやっと明治になってから始まったということもあり、保守主義が確立する余地が小さかった。
それでも著者は、明治憲法を起草し政党政治の先鞭をつけた伊藤博文に始まり星亨・原敬へ受け継がれ、戦後吉田茂大平正芳と連なる、日本の保守主義の命脈を見る。

しかし、特に戦後の保守主義を困難にしているのは、敗戦と占領、それに続く戦後経験をどう捉えるか、であると指摘する。
現行の憲法を押し付けられたものとして肯定的にとらえないか、はたまた状況適応的に現在の制度を不問に付すか。
そうした中途半端なスタンスではなく、現行憲法下、経済を優先しながら自国の軍隊を率いて国家間の戦争に参加しないという幸運を活用してきたことの意味を踏まえ、戦後経験から継承するものを自覚的に選択しなければならない。
そして単なる過去への懐古主義でなく、開放性と流動性をともなった開かれた保守主義こそが、未来が見えない現代の羅針盤となりうると結んでいます。

あとがきで、著者自身は保守主義者でも保守主義の批判者でもないとおっしゃっていますが、進歩主義が挫折・後退した今だからこそ、保守主義にどう頑張ってほしいのかを思いをこめて主張した一冊だったのではないかと受け止めました。
とってもいい本でした。ごちそうさまでした。

さて。
では保守の対抗である「リベラル」とは何なのか?
これまたマジックワードなので次はこちらをば。