「「文系学部廃止」の衝撃」(著: 吉見俊哉)を読みました

読了。

本書前半で昨年「文系学部廃止」がなぜ騒がれたのか?が分かりました。
ずっと指摘され続けてきたことがマスコミの取り上げ方で炎上したのと、その前提として「文系は役に立たない」という広く共有された見方があったというのがその原因とのこと。

もはや文系・理系の2分法自体ナンセンスだとは思いつつも、著者指摘の通り、文系分野諸学問は今ある価値体系を問い直すための視点・手掛かりを提供するという大事な役割を果たしうるのは確かだと思います。

本書後半は、文系というよりむしろ大学そのものが危機を迎えていて、それをどう乗り越えればいいかという提言でした。
著者の提言自体は本書に譲るとして、所感としては、細分化が進み越境的なコミュニケーションが難しくなっている現在、今の社会で責任ある(判断)主体として生きていく上で必要な「教養」を定義し、身につける機会を提供する、というのは大学、わけても総合大学の大事なミッションではないかということ。

平田オリザ氏は細分化が進んだ社会のコミュニケーションの一メディアとして芸術文化を位置づけ、劇場がそのための拠点たりうるという主張でしたが、それの「知」バージョンが大学ではないかと。

専門の学部のみが強く、交わらずに並立していて、知の見取り図を描けない大学はもはや総合大学(University)とは呼べないのでは、と思います。

 

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)