仕掛学(著:松村真宏)を読みました

もともと人工知能の研究者だった著者が、データ化されていない事象の多さに直面し、データに頼らず人の行動を促すにはどうしたらいいか思い悩んでたどりついたのが「仕掛け」。

例えば、問題解決につながる行動を促す「仕掛け」として、男性用便器の的や、駐輪スペースに引かれた斜線、バスケットゴールに擬せられたゴミ箱、などが取り上げられていました。

それらはいずれも、①公平で(誰も不利益をこうむらない)、②誘因的で(行動が誘われる)、③目的が二重(仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる)である、という特徴があって、この3要素が「仕掛け」と「非仕掛け」を分ける要件とされています。

 

行動経済学で取り上げられる「ナッジ」(肘でそっと押して行動を促すという意味)と比較すると、「ナッジ」は人があまり考えずに選択をしても不利益をこうむらないように選択肢を設計する(デフォルトの選択肢の設計)のに対し、「仕掛け」はつい選びたくなるもうひとつの行動を設計する(オルタナティブな選択肢の設計)とのこと。

 

著者曰く、「仕掛学」という新しい学問領域を立ち上げるため、「仕掛学」の考え方を広く知ってもらいたくものした入門書なんだそうです。
内容は極めて実用的ではあるのですが、果たして学問として成り立つだけの独自の方法論が確立し、分析・研究の厚みが出ていくんでしょうか・・・

 

あ、読み物と事例集として読むのであれば、面白い一冊だとは思います。

 

仕掛学

仕掛学