大卒無業女性の憂欝(著:前田正子)を読みました

取り上げられているケース・データや背景の考察が関西に偏っており、全国的に大卒無業女性がどうなっているのか、という全体像はつかみきれませんでした。
正直、タイトルはちょっと盛り気味かもしれません。

※関西で大卒無業女性が多いと主張されていますが、全国平均8.7%に対し大阪府9.6%なので、関西について論じれば問題の大勢はつかめる、というものでもないと思います。

「現在女子大生の8.7%、約2.2万人が無業状態で卒業する。特に関西ではその割合が約1割に達する。関西は地域的に専業主婦志向が強く、男性や親が仕事を続けることをよしとせずまたロールモデルとなる働く女性に触れ合う機会が少ないため、本人のキャリア意識が希薄なまま大学に進学・通学するからである。」(139字)

本書の個人的なハイライトは、全6章中5章は未婚大卒女子についての考察ですが、それとは別に、1章既婚の無業女性について働けない理由の分析がなされていたこと。

一億総活躍の号令のもと、働く女性が子どもを産むことに感じるハードルを下げるべく待機児童の解消などの施策がうたれていますが、それに比べると、すでに家庭に入り子どもを産んだ女性が働きに出やすくする施策は打ち出し不足の感が否めません。

両者は同じことのようですが、例えば認可保育園の入園審査時の点数評価が母親が在職したまま産休・育休に入っている子どもの方が、いったん退職しこれから復職しようという母親を持つ子どもより一般的に高いということにもあられているように、細かく見ていけば全く違った(もしかしたら正反対の)ベクトルが働いています。

今現在繰り出されてくる政策から透けて見える政治からのメッセージを超単純化してしまうと、「働く女性には(結婚し)子どもを産んで欲しいが、家庭に入り子どもを産んだ女性にはそんなに働いて欲しくない」となってしまうのではないか・・・。

このあたりには、時の政権の「家族観」も大きく影響するように思えてなりません。

 

本書でも指摘されていたロールモデルに触れる機会が少ないために女子大生のキャリア意識が育たないという問題を解消するには、今働いている女性が子どもを持ちやすくすることもさることながら、今働いていない子どもを持つ女性が働きやすくすることも同じくらいかそれ以上に大事なのではないかと思いました。
そういう女性が増えていくことは、女子大生のみならず、働きつつも結婚・出産をためらっている女性たちにとっても心強いことなんじゃないかなぁ。

 

一見遠回りのようですが、子どもを増やしたければ、これから産む女性たちより(あるいは並行して)、すでに産んだ女性たちへのサポートを手厚くするのが近道なのかも。
改めてそんなことを思いました。

 

大卒無業女性の憂鬱―彼女たちの働かない・働けない理由

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