日本の思想(著:丸山真男)を読みました

多分「保守主義とは何か?」を読んだ時に言及されていた一冊。日本には保守すべき機軸が確立してこなかったという指摘を、思想面で論じている本だろうと思って読みました。

曰く、日本人の中で、思想は、古いものが新しいものと対決せず、雑然と同居してしまう。だから新しいものもすぐに受け入れるし、外的環境が変われば旧い思想が忽然と姿をあらわしたりもする。
唯一伝統らしいものといえば「思想的寛容性」であり、それゆえに一貫性を備えたそれだけに排他的ともなるイデオロギーや思想に対しては、アレルギーを持っている。

著者の神道の評価も面白かったです。

神道はいわば縦にのっぺらぼうにのびた布筒のように、その時代時代に有力な宗教と「習合」してその教義内容を埋めて来た。

1957年に初出の論稿で、当時の時代背景を踏まえた立論(全体主義マルクス主義・政治と文学など)も多分に含んでいて必ずしも全てを消化しきれたわけではないですが、思想の雑居という伝統を脱し、せめて交雑した雑種を生み出すためにも、仲間内のタコ壺から出て「他者」とコミュニケーションしようとする強靭な自己統御力を具えた主体を自分たちが生み出さなければならない、という本文むすびの指摘は、(あいにく)今なお有効な箴言だと感じました。

 

 

 

 

日本の思想 (岩波新書)

日本の思想 (岩波新書)