そろそろ、人工知能の真実を話そう(著:ジャン・ガブリエルガナシア)を読みました

日経の書評で見つけて読んだ本。
タイトル(邦題)は、若干盛ってる感がします。どちらかというと原題のThe myth of the sinularityの方が内容をよく表していて、人工知能の真実というよりシンギュラリティ論の「神話性」を指摘した一冊です。

 

著者曰く、シンギュラリティ論は、ムーアの法則という観察された事実をあたかも普遍的な原理であるかのように拡大解釈・適用しており、他シナリオとの比較衡量や科学的な根拠を欠く物語=神話にすぎないと切って捨てます。

人工知能は、本来的にモデル化可能な特定目的型の道具であるにも関わらず、シンギュラリティ論や汎用人工知能・強いAIの到来を吹聴する人たちは、人工知能という言葉・外観はそのままに現実性の高くない内容に換骨奪胎しようとしている、と批判します。

 

ここまではふむふむ、そうかもな、と思える分析・批判なのですが、その先、人工知能の開発に携わるITのメジャーたち、GoogleAppleFacebookAmazon、がなぜ自ら開発を進めるAIの暴走に懸念を示す動きをするかについての分析あたりから、若干くもゆきがあやしくなってきました。

これらGAFAは、自らの責任は回避しつつ強いAIの出現は不可避であると人々に信じさせようとしており、データを囲い込むことによって政府に代わり人々を支配しようとしている、というのが著者の主張です。

 

ここまで話が行ってしまうと、それこそ科学的根拠を欠いた「まぁ、そういうシナリオも可能性ゼロではないわな」というレベルの話になってしまい、シンギュラリティ論と同じ穴のムジナになってしまっているなぁ、というのが率直な感想です。

 

今度は過去のブームとは違うといわれる人工知能・AIの先行きについては、いろんな可能性・パターンがまだオープンに存在しているというのが現状だと思っています。

何かに極端に振れているシナリオが出てきたときに、それは一方の端のシナリオだとバランスとった見方ができるよう、いろんなパターンの考察を入れておくという意味で、本書も相対的な意味がある一冊なのだと思いました。

 

そろそろ、人工知能の真実を話そう

そろそろ、人工知能の真実を話そう