2017年に読んだ本&お薦め5選

2017年も残すところあと24時間を切りました。
ということで、今年1年の読書記録の総括とお薦め本5編をピックアップしてみたいと思います。

 

リーディングリストをまとめてみましたが(※末尾)、振り返ってみると今年のテーマは、

「分断化した社会をどう生きるか」

であったようです。

 

経済的な格差の拡大、ポピュリズムの台頭と内向き志向、やまないテロ、難民の発生および排斥と、社会の分断化が世界中で進行しているしるしはそこら中にあふれています。
しかもオバマ前大統領が最近指摘した通り、SNSは人々を結びつけると同時に一定のネットワークの外の人々との交流を不活化して、社会の分断に拍車をかけている状況にあります。

 

そんな中でも、互いの存在を認め、一定の尊厳をもって、せめて並存できるような社会・世界に近づけるために何ができるだろうか?を模索している1年でありました。

 

では、おすすめに行きましょう!
まず2編。


1.「不平等を考える:政治理論入門」(著:齋藤純一、筑摩書房) 
2.「介入のとき(上)・(下)」(著:コフィ・アナン、岩波書店) 

1.は社会の不平等を
①どう評価するか(何を基準にするか)
②どんな制度で正すか(事前的介入/事後的介入)
③どう作っていくか(民主主義と平等)
を広く考察した著作。
入門と銘打たれた新書だけあってコンパクトで読みやすいですが、論点を幅広く押さえていて、さらに深掘りしたいと思うポイントをたくさん示してくれる一冊でした。(実際この本で引用されていた本をたくさん読みました。)

 

2.は元国連事務総長のコフィ・アナン氏の回顧録。
国連を主権国家ではなく人民のための組織とするため変革を試みたアナン氏が、次々起こる人道危機に際し、内紛当事国のトップや安保理常任理事国の首脳・外相と息の詰まるような協議・交渉を行った様子が生々しく描かれています。
グローバルジャスティス(世界正義)はなぜ必要か、現実にはどう「作られて」いるのかを知り、いかにあるべきかを考えるきっかけを本書にもらいました。

不平等を考える: 政治理論入門 (ちくま新書1241)

不平等を考える: 政治理論入門 (ちくま新書1241)

 
介入のとき――コフィ・アナン回顧録(上)

介入のとき――コフィ・アナン回顧録(上)

 
介入のとき――コフィ・アナン回顧録(下)

介入のとき――コフィ・アナン回顧録(下)

 

 

上で偉そうなこと書いたわりに、個人的にはいかに軽やかに、小回りきくように生きていられるかにとても関心があります。
なんとか好意的にみるならば、ひとりひとりが、何かに縛られず自由にのびのびと自らの生を生きることを追求できる、というのが自分の理想としてあって、それを個人的にも世の中的にも実現したい、というのが両面的に出てきているということでしょうか。
ジャンルとして、<生き方のオルタナティブ>とでも名付けられるような一群の本を詠んでいました。
その中のおすすめの一冊がこちら。

 

3.「なめらかなお金がめぐる社会。」(著:家入一真ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

クラウドファンディングサービスCAMPFIREの代表取締役、家入さんの著作です。 
なぜCAMPFIREをやっているのか、CAMPFIREが支えようとしている「小さな経済圏」とはどんなものでそれがこれからなぜ有効なのか、が書かれています。
本業にせよ、副業にせよ、(もしかしたらこういう区分がもはやなくなっていくのかも)ビジネスというかお金が回っていく仕組みをどう考えていくか、思考するスタンスのヒントがもらえる一冊だと思います。

 

※よそで十分評判なので本編では選に含めませんが、「LIFE SHIFT」は今年読んだ全ジャンルの本の中でも指折りの画期的な一冊でした。

続いては今や人としてどう生きるかを考える時に切り離せなくなっているTech分野から。
AI、ロボットは昨年読書の一大ジャンルでしたが、今年に入ってちょっと毛色の違う、もっと地に足ついた本が出てきているなぁと思いました。

4.「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」(著:藤野貴教、かんき出版)

シンギュラリティや汎用AIといったまだちょっと未来に起きることをああでもない、こうでもないと右往左往しているくらいなら、直近の2020年までにAIでできそうなことに着目し、人間にしかできないことをやりながらどう協働するのがいいか実例案も交えて紹介しています。

銀行でさえ人員をAI・ロボットに置き換えようとする今、人にしかできないことを考えるヒントが得られると思います。 

2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方

2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方

 

 

最後に、昨年からの続きの<日本とは?>のジャンルから。
日本的なるものの精神を知りたく、日本家屋や神道、思想(特に保守)分野の本もさんざん読んだのですが、ベスト1はこの本。

 

5.「日本の長い敗戦」(著:橋本明子、みすず書房

 

敗戦を社会的トラウマとして捉えたとき、戦後日本でそれをどう乗り越えようという動きがあったのか、それに対応するように日本人の安全保障観や、改憲をめぐるスタンスがどう形作られてきたのかがよくわかる一冊でした。

 

 

さて、来年はどんな本との出会いが待っていることでしょう。
まだ見ぬ出会いを楽しみにしつつ。


=======2017年読書目録=======

各書籍の詳細はこちらから見られます

【「社会の分断」と処方箋を考えるヒント】
〇中東・イスラム
 アラー世代・シリア難民・引き裂かれた道路・ボコハラム
〇正義論
 介入のとき・世界正義論・わたしが正義について語るなら・自分とは違った人たちとどう向き合うか・正義のフロンティア・正義のアイデア・正義への責任
〇貧困・社会保障
 生きづらさについて・不平等を考える・共生保障・生活保障・ヒルビリー・エレジー
〇政治
 接続性の地政学・人々の声が響き合うとき
〇金融
 なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?・愚者の黄金
〇アート
 最後の秘境東京藝大・アート×テクノロジーの時代

 

【生き方のオルタナティブ
〇時間(軸)
 自分の時間を取り戻そう・LIFE SHIFT・瞬間を生きる哲学・生産性
〇企業組織のオルタナティブ
 POWERS OF TWO・スタートアップ・持続可能な資本主義・なめらかなお金がめぐる社会。
〇地方
 団地のはなし・和僑・プラチナタウン・弱いつながり
〇シェア空間
 まちのゲストハウス考・シェア空間の設計手法・空間メディア入門

 

【techとヒト】
・Door to Door 移動の未来・インターネットの次に来るもの・テクノロジーは貧困を救わない・デジタルゴールド・ブロックチェーンの衝撃・クラウド時代の思考術・2020年人工知能時代の僕たちの幸せな働き方・中国モノマネ工場・そろそろ、人工知能の真実を話そう・ヒトラーのデザイン・弱いロボットの思考・シェアしたがる心理

 

【日本性】
〇家
 日本の家・民藝とは何か・日本のかたち―民家・民家・日本の家屋と生活
神道
 神道入門・日本人の神入門
〇政治
 日本会議の研究・それでも、日本人は「戦争」を選んだ・学問と「世間」・日本の思想・保守とは何か・暗い時代の人々・自民党

 

【Life Huck
・TED TALKS・仕掛学

 

【小説】
蜜蜂と遠雷・あの子は貴族

 

【哲学】
・孤独と不安のレッスン・メノン・ジブリアニメで哲学する

 

その他
・教育費破産
・北京レポート
・仕掛学