空間の使い方を考える本5冊を読んで考えたこと

昨年から続いている探究の大テーマは、あまりに断片化が進む社会/世界が怖くって、どうやって共通の地平を持つ/作ることができるのだろうか?ということ。

正義論シリーズに続いて箸休め的に読んだつもりの関係人口関連の本も、人は複数地点にどう関りを持ち連帯できるか問うという意味では、実は同じテーマのもとにあったんだと気づきました。

そして今回は人が集う物理的な場所についてのシリーズ5冊。

昨年アヅマ堂という場所を手に入れ、今オフィスの使われていない部分をどうにかしようと模索している中、建物・空間をどう使うと共通の地平づくりに近づくことができるだろう?ということを考えたくて今回のシリーズを選びました。

読み通して感得したことを先取りすると、

「複数のCommon Sphereにシェアされる空間にしよう、うち一つは必ずアートを入れよう」

ということ。

極めてハイ・コンテクストな表現なので、読んだ本それぞれから得た洞察をブレークダウンするとそれぞれ以下のようになります。

 

1.サードプレイス(著:レイ・オルデンバーグ)

住環境のPrivatizationを過度に進めた結果、コミュニティの核となっていた「とびきり居心地良い場所」=サードプレイス(例:パリのカフェ、ドイツのビアホールなど)が枯れていってしまった。

サードプレイスは近隣の人々が階級などに関わらずフラットに社交でき、情報交換や意見を交わすことができる公共圏 public sphereでもあった。

 

2.RePublic-公共空間のリノベーション(著:馬場正尊+Open A)

公共の意味はofficial、common、openの3種類ある。このうち中間のcommon、利害を共有する複数の参加者がいて限られた公に開かれた状態のcommon spaceがこれから必要になってくる。

 

3.PUBLIC DESIGNー新しい公共空間の作り方(著:馬場正尊+Open A)

公共空間とは関係を作る空間である。Public の反対は Privateではなく、no presence(誰も関心を持っていない)ことである。

 

4.シェアをデザインする(著:猪熊純、成瀬友梨、布山陽介、林千晶、馬場正尊、三浦展、小林弘人、門脇耕三、萩原修、安藤美冬、島原万丈、関口正人、中村真広、田中陽明、ドミニク・チェン)

人口減少が進む中、こぞって囲い込みprivatizeされていたものに余白が生まれ始めた。固定化・占有されていた場所・スキル・役割を開放し、流動化することで、新しい価値の創造につなげることができる。

 

5.文化政策の展開―アーツ・マネジメントと創造都市(著:野田邦弘)

アートは脱美術館が進みワークインプログレス、フェスなどプロジェクト化している。ゆえに地域づくりや社会包摂に有効である。

※アートは自己表現の交感で労働に勝るとも劣らない社会参加の一形態で、それでなければ築けない共通の地平を築くことができると思う。

 

これを全部ひっくるめて、多用途・非占有で、複数の公共圏(publicではなくcommon sphere)-うち少なくともひとつはアート-が同居する空間、というのが一番理想像に近そうだ、ということになりました。

 

さぁ、上流の希望はだんだん固まってきたぞ。

具体的な姿にどう落とし込んでいけるかなぁ。

 

 

  

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

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PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

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シェアをデザインする: 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場

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文化政策の展開: アーツ・マネジメントと創造都市

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