戦争調査会 幻の政府文書を読み解く(著:井上寿一)を読みました

戦後幣原喜重郎の下、日本人の手により開戦と敗戦の理由を検証しようと設置された戦争調査会。結果的にはGHQの命により、最終報告をまとめるに至らなかったが、同調査会の集めた資料をもとに、著者が分析の続きを試みた一冊。

同調査会が行った関係者へのインタビュー録の分析など、他の太平洋戦争関連の書籍では登場しなかったような人物・視点からの太平洋戦争の見え方が明らかにされている。

 

自分でも意外だけど、気付けば太平洋戦争関連の本は年に数冊は読んでいる。ここ2年くらいで読んだのは下記。

 

「1941 決意なき開戦」(著:堀田江理)

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(著:加藤陽子

 

「暗い時代の人々」(著:森まゆみ

「日本の長い敗戦」(著:橋本明子)

 

何冊も読み重ねて改めて感じるのは、戦争に至ってしまった原因は『これ』とひとつ明確に名指すことができるものではなく、首相はじめ大臣・軍幹部など時のリーダークラス、各リーダーの言動に影響を及ぼす政党や軍などそれぞれの組織、過剰に肥大化した自意識を煽りまた抱いたメディアと市井の人々、それが幾重にも折り重なった「あや」でそこに入りこんでしまった、ということ。

調査会を主導した幣原喜重郎には、なぜ日本人はあの戦争を戦わねばならなかったのか、なぜ敗戦を喫したのか、終戦直後の不戦の誓いが万一数十年後に緩むかもしれないその時、このような資料があれば戦争を思いとどまるかもしれない、という狙いがあったという。

 

今がその誓いが緩んでいるときなのかどうかは、正直よくわからない。

でも、いつ・どうなった時はいつかきたあの道に近いんじゃないか、ということに勘付ける準備をしておくことは、あの戦争を起こした後の時代を生きる自分たちの義務なんじゃないかと思う。
だからもっと多面的に太平洋戦争のことを見られるよう、これからも関連本は読み続けていきたい。