初めて「戯曲」というジャンルの本を読んでみました。
きっかけは恩田陸さんの演劇小説を読んだこと。恩田さんご自身も戯曲を書かれたとのことで、このジャンルに興味を持ちました。
中でもブレヒトを選んだのは、戦争、特にドイツの第二次世界大戦をモチーフにした作品があったからです。
以前太平洋戦争時代に軍国主義に立ち向かおうとした人々を素描した森まゆみさんの「暗い時代の人々」という本を読んだことがありましたが、ナチ時代のドイツを経験したブレヒトが演劇を通して戦争をどう提示したのか読んでみたかったのです。
(実際、もともとのハンナ・アーレントの手になる「暗い時代の人々」でもブレヒトが取り上げられていたようです。)
「アンティゴネ」がこの目的に一番適っていて、ギリシア悲劇をモチーフに、専制者を恐れ自らの保身に走るあまり自分の倫理を貫いたり不都合な現実に向き合おうとすることを忘れ、「無思考」に陥ることの危険を考えさせる内容になっています。
「子供の十字軍」は詩ですが、ポーランドで孤児になった子どもたちが平和と安住の地を求めてさまよい歩く、という何とも切ないお話でした。
今なお戦闘が続くシリアでは遠からずな状況が起きているのではないかと、全く過去の話と思えないところが悲しいところです。
「三文オペラ」は、戦争ものではなく、ロンドンを舞台としたアウトサイダーたちのドタバタ劇で、日本でも多くの劇団が再演しているようです。
訳者谷川道子さんの解説を読んで感じたのは、オマージュというか、すでに存在している題材を改作・編集して現在的文脈の中で再構成し観衆に問う、というのは演劇のひとつのスタイルとしてあるのだな、ということ。
今で言うところの二次創作というか、マッシュ・アップというか、コラージュというか、に通ずるところがあって、作り方はとっても今っぽい(というかこれらが演劇っぽいのか?)んだな、と気づかされました。
そういう「遊び方」の相似性を入り口にしたら、もしかすると「演劇」が近くなる人がもっといるのかもしれないなぁ、なんて考えたりしました。(親しむ人を増やすことがいつも目的である必要はないとは思いますが。)