贈与論(著:マルセル・モース)を読みました

 新しいお金の話の本を読んだとき、お金を媒介した売買取引以外の交感について言及される中で取り上げられていたのがきっかけで本書を読みました。

 

贈与や交換が社会的にどのような意味を持っているのか、要素に分解することなくあくまで全体的な性質として説明を試みている一冊で、ポリネシアメラネシア、北米、古代ローマなど、地理横断的・時代横断的な比較を行ったうえで分析を加えています。

 

特に南太平洋でのケースとして取り上げられていた「ポトラッチ」が印象に残ったのですが、「ポトラッチ」は持てる全てといっていいくらいの贈与行うことで相手を圧倒し、覇を競うという性格を持っていたのだそうです。

「ポトラッチ」を勝ち抜くことは、集団内部にもそれだけ多くの分配の元をもたらすことになるので、その集団の首領にすれば力(パワー)の淵源にもなります。

 

溜め込むのではなく、集団の中に対しても外に対しても気前よく配れば配るほどパワーを手にしていくというのは、今自分たちが普通に慣れてしまっている社会の慣行とはある意味真逆であるようで面白かったですが、ふと、もしかしたら今の社会でも同じようにスルーを増やす人が情報や人と人の繋がりの結節点になって、いわゆるソフトパワーを備えることにもなるのかもしれないと思ったりもしました。

 

贈与といっても深奥にはいろいろな思惑があって、贈ったり・受けたりで結ばれる関係がどんなものかよく目を凝らして見てみないと、ナイーブにいい・悪いとは言えないんだなぁ。自分が確信犯的にそれをするのはちょっと気が引けるけど・・・。

 

贈与論 他二篇 (岩波文庫)

贈与論 他二篇 (岩波文庫)