漂流郵便局:届け先の分からない手紙、預かります(著:久保田沙耶)を読みました

サブタイトルにもある通り、届け先の分からない手紙を預かる「漂流郵便局」は、もともと瀬戸内国際芸術祭の出展作として、廃止になった郵便局を設えなおして設けられたものでした。それが好評を呼び芸術祭終了後の現在も存続して手紙を受け入れ続けています。

 

本書はその「漂流郵便局」に実際に寄せられた手紙の紹介とともに、作者自身がどのような制作意図をこめたのかを解説したもの。

 

紹介されている手紙には、惑星探査機やペットに宛てたものから、先だった夫や子どもに向けたものまで、いろいろなものがありますが、今は亡き肉親に語り掛けるように綴られた手紙はとても心を打つもので、正直、飛行機の中で読みながら泣いてしまうほどでした。

 

作者自身の解説によると、返事のない相手もコミュニケーションをとりたがっていると信じる人間のコミュニケーションへの欲求と、粟島の海を漂って感じた自分も何もかも大きな流れの中をたゆたう一部であるという感覚がインスピレーションになって、漂流郵便局が生まれたそうです。

 

詳細は本書に譲りますが、海岸の漂着物や漂流私書箱などインスタレーションとしても(コンセプトだけでなく)優れた漂流郵便局、一度行ってみたいと思いました。

まずは本書でその一端を味わってみてください。

 

漂流郵便局: 届け先のわからない手紙、預かります

漂流郵便局: 届け先のわからない手紙、預かります