スペキュラティブ・デザイン 問題解決から、問題提起へ(著:アンソニー・ダン、フィオーナ・レイビー)を読みました

副題の通り、デザインが違った未来のあり方についての想像を喚起するためにできること=スペキュラティブ・デザインについての考え方や事例を紹介した本。

 

既存のデザインのアプローチが、今あるニーズによく応える、商業的な、問題解決のためのものに偏っているという問題意識から、世界や未来の違ったあり方について考えを巡らせるきっかけとなるような、表現的な、問題提起のためのデザインについても、より積極的に取り組んでいくべき、と指摘しています。

例えば科学や技術について言えば、その現状を分かりやすく伝えたり、現実的な商品に結実させるためにデザインを用いるのが既存のアプローチだとすれば、それらが招来するかもしれない未来を象徴するプロダクトを具現化することで、未来について思いを巡らせ、何もしないままとは”違う”パラレルな未来を構想し引き寄せるようなアプローチがスペキュラティブ・デザインの例に当たります。

答えではなく問いを提起するスペキュラティブ・デザインは、それに触れた人の解釈に委ねる余白があるという点で、よりアートに近しい存在でもあるようです。

今ある姿かたち以外の可能性を認める、未来志向である、オープンエンドで創造の余地を残している、というあたりがとても余白探究的で、読んでいてワクワクしました。

余白探究のアプローチを分かりやすく人に伝えるためのいいヒントをもらったような気がします。

 

問いが同定された後の問題解決はAIがより上手にこなしていくようになるんだとすると、スペキュラティブ・デザイン的なアプローチで問い立てすることこそが人間が習熟していかなければいけない領域なのではないかと思いました。

 

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること