ユートロニカのこちら側(著:小川哲)を読みました
AIとプライバシーについてのEテレの深夜番組をたまたま観ていて、システムの力を見通しつつも人間性を諦めないような発言をされる著者を拝見し、「面白そうだな」と触手が伸びて手に取った本書。
著者が大学院在学中に上梓し、第3回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞した作品です。
あらすじは、視覚・聴覚を含むバイオデータと引き換えに働かずとも自分の「好みに沿って」暮らしていけるという『アガスティア・リゾート』に関係する人々を描いた6編のオムニバス小説。
人工知能「エージェント」によるフィルタリングは、果たしてヘルプなのか監視なのか?
自分の一挙手一投足、はては思考についてさえ、社会秩序維持にとっての好ましさという軸で評価され「情報ランク」が上下するさまはディストピアに違いないと思うのですが、ちょっと気付かずにいると社会の中にそういう領域が徐々に広がっていきそうで背筋がゾッとします。
ささやかですが、自由を守るために考え続ける・考え抜く姿勢はなくしちゃいけないと思いました。