2018年読んだ本10選

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いよいよ2018年も大詰め。ということで毎年恒例の今年の読書振り返りと、その中のおススメ本の紹介をしたいと思います。

〇概観 ~ Overview

2018年に読んだ本は合計78冊でした。大まかにジャンル分けをするとこんな感じになります。

  • Alternative Economy・・・『うしろめたさの人類学』(著:松村圭一郎)、『ゆっくり、いそげ』(著:影山知明)、『WE ARE LONELY BUT NOT ALONE』(著:佐渡島庸平)など
  • 芸術・文化・・・『漂流郵便局』(著:久保田沙耶)、『住み開き』(著:アサダワタル)など
  • 社会・・・『エルサレムアイヒマン』(著:ハンナ・アーレント)、『引き裂かれた大地:中東に生きる六人の物語』(著:スコット・アンダーソン)など
  • 小説・戯曲・・・『中庭の出来事』(著:恩田陸)、『一九八四年』(著:ジョージ・オーウェル)など
  • 政治・・・『分裂と統合の日本政治』(著:砂原庸介)、『黙殺 報じられない’無頼系独立候補”たちの戦い』(著:畠山理仁)など
  • 地域/都市論・・・『アメリカ大都市の死と生』(著:ジェイン・ジェイコブス)、『あそびの生まれる場所ー「お客様時代」の公共マネジメント』(著:西川正)など
  • デザイン・・・『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。―未来を思索するためにデザインができること』(著 : アンソニー・ダン、フィオーナ・レイビー)、『新しい分かり方』(著:佐藤雅彦)など
  • 哲学・・・『勉強の哲学』(著:千葉雅也)、『メルロ・ポンティ 触発する思想』(著:加賀野井秀一)など
  • ビジネス書・・・『サブスクリプションマーケティング』(著:アン・H・ジャンザー)、『おもてなし幻想』(著:マシュー・ディクソン)など

※もし万が一「全冊見てみたいよ!」という方は下記ブクログ本棚からご覧いただけます。

booklog.jp

 

こうして見てみると自分の全体的な問題関心は引き続き、個人個人がその人自身として居られる包摂的(inclusive)な社会にどうしたら近づけるのかというところにあるのだと分かります。

この全78冊から今年は「おススメしたい本」と「自分に気付きが大きかった本」に分けてご紹介したいと思います。

〇他の人におススメしたい本4選

まずはオススメ本から。

 1.民主主義の条件(著:砂原庸介

民主主義の条件

民主主義の条件

 

分かるようで分からない政治の仕組みの基礎を分かりやすく解説してくれている一冊です。学校の教科書には載っていないリアルな動きを教えてくれるほか、あまりフォーカスされにくい政党制度や選挙管理に光を当てていて「そんなことも関わってくるんだ!」と目の覚める思いがしたことを覚えています。大人の教科書としてぜひ一読されることをおススメします。

 

2.認知症フレンドリー社会(著:徳田雄人)

認知症フレンドリー社会 (岩波新書)

認知症フレンドリー社会 (岩波新書)

 

 もちろん人数が増えていくから大事ということもありますが、認知症は社会現象である(本人の認知機能の低下だけをもってして発症とされるのではなく、社会生活に支障が生じたときに認知症とされる)ととらえると、社会側の受容力のなさが生き辛さを抱える人を生み出すという構図はあまねく存在していて(例えば発達障害)、およそ社会に暮らす誰もが関りがあるイシューであると気付かせてくれるところがおススメのポイントです。

 

3.牛と土(著:眞並恭介)

牛と土 福島、3.11その後。 (集英社文庫)

牛と土 福島、3.11その後。 (集英社文庫)

 

 3.11後、退避区域において牛を育て続ける牛飼いの人々を追ったルポです。ニュースや新聞でそのような取り組みをされている方々がいると情報としては接したことがあるかと思いますが、どんな人たちがどんな想いをもちならどんな現実と向かい合っているのかが丁寧に追われていて、今この時に何が起きているのかという現実味が一気に高まります。

 

4.私とは何か(著:平野啓一郎

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

 

自分は何がしたいのか、どれが本当の自分なのかとふと迷うことは折に触れあると思います。その最中にいる時はよって立つ足場がなくなるような苦しさも覚えるでしょう。確固たるゆるぎない自分などなく 、誰しも人との関係性の中で複数の「分人」を持っていてその組み合わせこそがその人を作るのだという本書を読むと、「こうでなくては」という肩の力が抜けて心が軽くなる人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

〇気付きが大きかった本6選

続いて自分にとって気づきが大きかった本です。

1.貧困の戦後史(著:岩田正美)

貧困の戦後史 (筑摩選書)

貧困の戦後史 (筑摩選書)

 

断片的に言葉だけ知っていた貧困の現れの実相を通史的に知れたことと、貧困者は自立的であろうとしすぎていて社会がそれを促しているという指摘が気づきポイントでした。

 

2.私はすでに死んでいる(著:アニル・アナンサスワーミー) 

私はすでに死んでいる――ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳

私はすでに死んでいる――ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳

 

<自己>がゆがむ各種障がいを神経科学の知見から分析しそれによって<自己>の源泉に迫っている本です。統合失調症自閉症など完全に頭の中に閉じていそうな障がいでさえ、自分の身体についての知覚が関わっているというのが大きな気づきでした。

 

 3.コミュニティ難民のススメ(著:アサダワタル)

コミュニティ難民のススメ ― 表現と仕事のハザマにあること ―

コミュニティ難民のススメ ― 表現と仕事のハザマにあること ―

 

いろいろな私として職業区分にとらわれず複数のコミュニティに関わっていく実践例を見せてもらったことと、その一般にはなんだかよく分からないあり方にコミュニティ難民という呼称を付けてくださったことにありがとうと言いたい気持ちです。

 

4.ゲンロン0 観光客の哲学(著:東浩紀

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

 

どちらかというと搾取的と見られあてにもされない「観光客」という関わり方が、きちんとつながりを生みうるし現状を相対化する契機にもなりうると、観光の潜在価値を言語化されていたのが気付きのポイントでした。

 

5.熱海の奇跡(著:市来広一郎)

熱海の奇跡

熱海の奇跡

 

 何をどういう順番でやっていくべきかというまちづくりフェーズ分けを提示されていたのがとても参考になりました。

 

6.遅刻してくれてありがとう(著:トーマス・フリードマン

まだ上巻しか読めていませんが、それだけでもグローバルなデジタルフローへの貢献(take するだけではなく、contributeしなければならない)をしないと完全に取り残されるという危機感を自分事として抱かせてもらいました。

 

 いかがでしたでしょうか?
何かピンとくる一冊があったようであれば、とっても嬉しいです。
来年もまた心と頭のおもむくままに本を読み続けたいと思います!