どもる体(著:伊藤亜紗)を読みました

吃音、いわゆるどもりとはどういった現象なのかを当事者である著者が解説している本。

 

どもりにも同じ音が続けてでる連発、言い出しの言葉がでない難発、どもりが起きそうな予感に備え言葉を置き換える言い換え 、と複数パターンがあることを初めて知りました。

 

そもそも発語・発音は、呼吸や歩くことと同じようにほとんど意識しないまま行っている行動です。しかしそれを分解してみると、これからどんな言葉をどんな繋がりで言おうとしているかを予測しながら、次々に口腔内の各器官(舌、声帯、などなど)を然るべきポジションへ動かし続けていくというとっても複雑かつ微妙な一連の動作から成り立っているんだそうです。

そしてどもりの一番初めに来る症状・連発は、何らかの拍子にこの運動が整わず、身体がreadyになるまで探索的に音を出している状況。いわば言葉の前に体が出てくるような感じで、当事者としても「ノる」感覚でいられるものなんだそう。

他方「ノり」続け対処することが馴染んで自動化してくると、今度は自らの対処法(例えば言い換え)に自分が「乗っ取られる」感覚がしてくる。発話者である自分が本当に発したい言葉・トーンではないものを、聞き手が受け取り、自分が言いたかったこととして受け取っていくことに違和感を感じるようになるんだそうです。

どもりへの対応が自らのアイデンティティ・自己主体性をゆるがすほどのインパクトを持つことがあるというのも初耳でとっても新鮮でした。

 

身近にあるようで実はよく知らないものの実体を教えてくれる本書は発見に次ぐ発見で、気づきの多い読書体験を提供してくれる一冊でした。

 

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)