遅刻してくれて、ありがとう(著:トーマス・フリードマン)を読みました

「フラット化する世界」の著者が、今現在世界に働いているダイナミクスとその影響、それにどう対応していくべきかを考察した本。タイトルには加速度的に変化が起きフローが激しい今だからこそ、ちょっと立ち止まって考えてみようという意味が込められている。

 

著者が挙げている世界に働く主なドライビングフォースは3つ。
1.ムーアの法則クラウドが可能にした情報(フロー)の超爆発
2.マーケットの変化(ストック型からフロー型へ)
3.気候変動

これらが経済の仕組みや雇用、社会契約の変革を迫っており、今はその過渡期にあるのだと言う。3つのドライビングフォースに共通する特徴はどれも幾何級数的加速度を有しているということで、物理的テクノロジーに負けないくらい早い社会的テクノロジーの進化と学び続けることが必要になる。

 

急激な変化に対応する社会的イノベーションを実現するためには、多様性を受け入れ、信頼にあふれたコミュニティが有効であると著者は主張している。それがあって初めて人々は変化にオープンになることができ、動的平衡が常態の今にあって、学び続け、よりよい社会的合意を目指し、チャレンジすることができるのだと言う。
(本書ではその具体例として自身が生まれ育ったミネソタの環境を振り返っている。ちょっと鼻白む感じがしないわけでもないが、確かにマイケル・サンデルなど輩出している人材や公教育・公共施設への企業・市民コミットの高さは目を見張るものがある。)

対応策の考察については、アメリカ式の教育を導入すればいいという提案をしたり、自分の故郷の社会風土を模範ケースとしていたり、若干自己偏重気味で「そういう考え方もあるわな」というつもりで受け止めた方がいいように思うが、現状の分析・捉え方についてはとても鋭く参考になった。

急激な変化に巻き込まれるのではなく乗りこなしていくためには、デジタルフローに参加、それもtakerとしてそこにいるのではなく貢献していかなければならない。日本にいる日本人として何ができる可能性があるだろうか、(Aging?高信頼社会?)ということを考えさせられる一冊でした。