差別について知る本2冊を読みましたー「憎しみに抗って」・「世界と僕のあいだに」

世界がだんだん「異なるもの」を受け入れる余裕をなくしていっているんじゃないかー直感的にそう感じていて、実際どんな事態がどう起こっているのか知りたくて、差別についての本を2冊読みました。

 

一冊目は、ドイツ人ジャーナリストのカロリン・エムケが著した「憎しみに抗ってー不純なものへの賛歌」です。

憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

 

ヨーロッパのいわば最後の良心として移民の受け容れを許容してきたドイツでさえも、反移民を掲げる政党が議席を伸ばしてきたことは衝撃でした。いよいよそこまでなのかと。

著者は、ドイツでまるで平等には限りがあるかのように寛容さが上限を迎え、「これ以上は求めすぎではないか?」という声が上がり、憎しみが公然と口にされるようになっていることに危機感を覚えています。
そして本書では、ドイツ国内で起きた反移民の事件(輸送車を住民が取り囲んだり、宿舎への放火が起きたり)や、アメリカで起きた白人警察官による過剰に暴力的な取り締まりに起因する無実の黒人の死亡事件、セクシャルマイノリティーへの蔑視を取り上げながら、オープンで寛容であり続ける必要性を説いています。憎しみに憎しみで応えないことが、差別への最大の対抗策だと。

そしてもう一冊が、「憎しみに抗って」でも取り上げられていたアメリカでの黒人差別についての本。タナハシ・コーツが自分の息子に宛てた手紙という形で 、いかに黒人の身体的安全が日常的に脅かされているか、それに闘わなければならないかを説いた「世界と僕のあいだに」。 

世界と僕のあいだに

世界と僕のあいだに

 

 警察の「暴力」に日々怯えながら過ごす不安がどれほどのものか、自分の身内に何かあったらと心配しながら送らなければならない日常がどのように苦悩に満ちているかが、父親という立場からの言葉で綴られていて心に迫ります。
何事もそうだと思いますが、情報・知識として聞き知っていることと、物語としてエピソード含みで腹落ちするのとでは、心に刻まれる度合いが違うなぁと思いました。

 

上述のカロリン・エムケも自身セクシャルマイノリティで、両冊とも差別を受けた経験者が差別について著わしているという共通点があります。差別って本当にしている側からは見えにくくなるところがあって、受けた当事者の声に耳を澄ませて、構造的なものも含め自分がする側に回っていないだろうか?と折に触れ振り返ってみることが必要だと思います。
その意味でも、この2冊は貴重な考える材料になる本でした。