アジアに生きるイスラームを読みました

イスラムと言えば発祥の地でもある中東のものというイメージが強いのではないでしょうか。スンニ派シーア派、そしてワッハーブ派など、宗派が各国・各勢力間のパワーゲームの大義名分にも使われ、それぞれどんなものなのかについての解説も折に触れ目にすることがあります。

 

しかし、世界一イスラム教徒が多い国がインドネシアであるように、東南アジア~南アジアにもイスラム教を信仰する人が相当数いるよな、じゃあそれらの人々が日々どのように暮らしているのか、中東の情勢に影響を受けたりするんだろうか、と何となく気にはなっていました。そんな中書評で本書が取り上げられているのを目にして、ちょうどいいと思って読んでみた一冊です。

扱われているのは、8か国12の都市・地域。フィリピン(マニラ、タウイ・タウイ)、インドネシア(スラバヤ)、マレーシア(クアラルンプール)、タイ(バンコクプーケット)、ミャンマーヤンゴンマンダレー)、バングラデシュダッカ)、インド(デーオバンド)、スリランカコロンボ、カッタクンディ)がそれ。

 

アジアに生きるイスラーム

アジアに生きるイスラーム

 

 

各地の詳細は本書に譲るとして、通読して感じたのは、一口にイスラムと言ってもそれぞれの地域の実情に適合する形で受容されており、地域内においても多様なあり方をしているということ。

 

しかしこれはわが身を考えてみればすぐに「なるほど」と分かることでした。

例えば、同じ仏教徒だからと言って、タイと日本は同じようなものだろうと捉えられたら、当事者としては「いやいやいや」と思うでしょう。(そもそも日本人がどれだけ仏教徒かという話もあるけれど…)

 

宗教というのはもちろん大事な文化・アイデンティティの構成要素だけど、決してそれが全てではなくって、歴史的な軌跡やその地の風土ともあいまった一部であると思います。

イスラム教徒」と一括りにしないで、その土地ごとの生活実践や価値観を知ろうとする好奇心や想像力の大事さに気付かせてもらえるような一冊でした。