知識人と差別について考える本を読みましたー「知識人とは何か」・「ポスト・オリエンタリズム」
言説を生み出す知識人は差別を糾弾・排撃する側にも、助長する側にもなりうる。
オリエンタリズムの著者であるエドワード・サイードの「知識人とは何か」と、その後継者と目されるハミッド・ダバシの「ポスト・オリエンタリズム」に通底する問題意識はそこにあって、では知識人はいかにあるべきかをそれぞれが説いています。
両者とも基本的にテクスト分析などの象徴文化論的なアプローチを取っているのだと思いますが、このアプローチは前提として求められる各書についての知識がとても多く、ついて行くのが大変だなぁ(というかついて行ききれない・・・)というのが偽らざるところでした。
知識人は弱きもの・周縁化されたものの側に立つべきというのが当然両者の論なのですが、それを実現するには発した言説を受け取ってもらい、支持してもらわなければならない。いかに長いものに巻かれず、しかしながら聞き届けられる批判的言説を発することができるかというジレンマがそこにはあるのでした。サイードの場合は「亡命者」となることによって、ダバシの場合は対話者を取り換えることによってそのジレンマを乗り越えようと提起しています。
発信の機会が増えた今、あからさまなものはもちろんのこと、気付かぬうちに抑圧する側に立ってしまうような言説を垂れ流さぬよう、今自分が依拠している見方・価値観を外すような機会を意識的に持つことが必要なんだな、と感じました。
- 作者: エドワード・W.サイード,Edward W. Said,大橋洋一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1998/03/11
- メディア: 文庫
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