日本の夜の公共圏:スナック研究序説(著:谷口浩一、スナック研究会)を読みました

「スナック」とはいかなる社会空間かを、法学・政治学・文学等の研究者たちが各々の専門分野の視点から考察した一冊。
スナックがどのような法規制の下今あるような業態にたどりついたのか、また開業・経営に当たってはどのような届出や基準を求められるのかといった法制度的な話から、社交の場・公共圏としてのスナックの機能について論じたものなど、多様に真面目に考察されていて面白かったです。

 

これは本書全体を通して受ける印象ですが、真面目にふざけている、もしくはふざけたテーマをいたって真面目に取り扱っているところに粋を感じます。
なにせ研究会自体、スナックを会場としてお店のママたちにも発表を聞いてもらいながら行ったとのことです。また本研究会にサントリー文化財団が助成を出しているところも、さすが「やってみなはれ」の度量の広さというか、でもギリギリ本業に関わらなくもないか、という絶妙の線を行っていて、思わずニヤリとさせられます。

 

今でこそオジサンの牙城であったり、地域の夜の公民館だったり、まるいイメージのスナックですが、原宿族と呼ばれる若者たちが赤坂・青山あたりでたむろしていたのがスナックだったと知って、もともとそういうルーツだったのかと、今のイメージとのギャップに新鮮な驚きを覚えました。

いずれかの章でオルデンバーグのサード・プレイスになぞらえられていましたが、昼間の身分関係なく集った者同士が社交するというスナックはまさにサード・プレイスだと思います。最近、ポップアップ型のスナックが流行りだしたのも、そういう社交の場を求める声に応えたものなのかもしれません。

本書は序説と謳われている通り、本編が続いて用意されているらしいです。早く本編も読んでみたいなぁと思いました。

 

日本の夜の公共圏:スナック研究序説

日本の夜の公共圏:スナック研究序説