ソーシャルメディアと<世論>形成(著:遠藤薫)を読みました

ソーシャルメディア、世論形成それぞれにまつわるトピックやケーススタディを広く取り揃えている一冊です。

 

誰もが発信者になれるソーシャルメディアが発達したことで、旧来のマスメディアが情報伝達を寡占する時代が終わり、クロスメディアが当たり前となる時代(著者の言葉では感メディア社会)になってきていると著者は指摘しています。
こと政治については、オバマ大統領が誕生する過程で顕著であったように、ビッグデータ化された個人のプロフィール・嗜好を踏まえたターゲティングと情報発信がなされ、選挙結果を左右するほどになっている。それに対しマスメディアやジャーナリズムの側の分析力、テック対応が進んでおらず、権力の側からの影響力行使を監視する力が弱いことを指摘しています。
日本についても自民党のネット選挙への対応が紹介され、データによる有権者の志向の分析やメディア横断的な情報発信に取り組んでいる様子が取り上げられていました。

 

個人的に本書で一番新しい発見があったのは、著者と津田大介さんの対談のパートです。お名前は度々拝見していた津田大介さんの来歴や、なぜそれらに取り組んでこられたのかという「つもり」の話を初めて窺い知ることができました。

 

ソーシャルメディアによる世論形成の全体像・モデルのようなものを析出するを期待するという方よりも、関連のあるトピックの広がりや考える切り口を広めにさらいたいという方向けの本だと思います。

 

ソーシャルメディアと〈世論〉形成

ソーシャルメディアと〈世論〉形成