日本の地方政府(著:曽我兼悟)を読みました

どこで何やっているのかイマイチ分かりにくい「地方自治体」について、①執政制度のあり方(議会と首長・行政の関係)、②住民との関係、③地域社会・経済との関係、④地方自治体間の関係、⑤中央政府との関係、から解説した本。

イマイチどこで何やっているか分かりにくかった地方自治体が、なぜ今のようになっていてかつ分かりにくいのかよく分かりました。

 

一因として挙がっていたのが、その名前にも表れている通り、あたかも地方には行政機構だけが存在しているかのようで政官関係が欠落してきたこと。

政治の側では、選挙制度の影響もあって、政党が形作られてこなかった経緯があります。地方議会の議員は自身の支持層となる個別の狭い利益を代表し、直接役所ないしは首長と交渉することで必要な予算・法案を確保してきました。

他方行政の側ではジェネラリスト重視により専門性が不足がちとなり、また外部との距離を取った関係構築が不得手で、明確な組織原理を持った再編がなされてこなかったという事情があります。

それらがあいまって政官双方ともにそれぞれの果たすべき役割をつきつめてお互い対峙してこなかったということです。

 

そして政官関係が欠落していても地方政府がやっていけていたのは、中央政府による統制があったからでした。しかし人、業務・権限、財源とあった中央政府の統制手段も、累次にわたる地方分権改革を通じて、財源(徴税権)以外は地方政府の手に委ねられてきています。

 

著者の指摘する通り、人口増加だけを金科玉条のように掲げるのではなく、自分たちの住む地域をどのような地域にするか、そのために負担をどう担うのか、どのような行政機構で臨むのか、まさに「自治」が問われている段にきているのだな、と思いました。

 

しかし、どの本を読んでも地方の選挙制度は問題あり、と指摘されています。

これを是正しようという動きはどうやったら始められるものでしょうか・・・。

 

日本の地方政府-1700自治体の実態と課題 (中公新書)

日本の地方政府-1700自治体の実態と課題 (中公新書)