空き家に関する本を読みました

去年献本頂いた「新築がお好きですか?」を読んで以来気になっていたテーマのひとつが「空き家」。

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読む本のすき間がちょうどぽっかり空いたので、読みたいリストに入れていた関連書をまとめて読んでみました。

 

緩い土地利用規制や強すぎる私権などのため焼き畑的に広がった新築住宅が、居住者の老いとともにどのように「負」動産化していくかを解説していたのが、「老いる家 崩れる街」(著:野澤千絵)。 
登記が義務ではないこと、「負」動産は相続放棄されることなどを通じて、持ち主不明の荒れた住宅が増えていくかもしれないという未来図はとても恐ろしくて読んでいて目がくらくらしそうでした。とくに戸建てよりも合意形成が難しい集合住宅の場合を思うと、どれだけの困難が待ち受けているか考えたくなくなりそうなほどです。

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

 

 

そうした前著を受けて、たとえ個々の家が老いても街そのものが衰えることをまぬがれるためには、各住宅の住人が自分亡き後持ち家をどう処分するか予め考えて備えておく必要があるということを、その実際のステップと合わせ説いているのが「老いた家 衰えぬ街」(著:野澤千絵)です。巻末には住まいの終活シートも収められていて、すぐ考え始めたいという方にはもってこいの内容になっていると思います。
住まいの終活の困難さを考えた時、マンションなどの集合住宅は今現在デベロッパーの売り逃げに近いものがあるのではないでしょうか。建てて売った利益は自分たちのもの、壊す時の不利益は住み続けた人または賄いきれない部分は公金投入というのではアンバランスです。

老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書)

老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書)

 

 

「土地は誰のものか」も同じような文脈で書かれた本でした。

土地はだれのものか―人口減少時代に問う

土地はだれのものか―人口減少時代に問う

 

 

ちなみに外国ではどうなってるんでしょう、いい事例ないのかなと思って読んだのが「世界の空き家対策」です。アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国の事例が紹介されていました。イギリス、ドイツは移民の受け入れもあって、住宅を求める需要が日本より全然強いという違いがあり、空き家はなるべく早く市場に戻すというのが基本的な姿勢になっているようです。アメリカの人口減少都市を取り上げた章では、地元のコミュニティやNGOが主体となって空き家の転用や市場再投入に取り組み、町の住環境と不動産価値を守っている事例が紹介されていました。そのうち特にランドバンクという仕組みは、これから相続放棄が相次ぎそうな日本でもなるべく公金投入を抑えつつ空き家を減らし地域の価値を守るため役に立ちそうだな、と思います。 

 

「年金」や「社会保障」については、人口動態などによってある程度将来負うべき負債が見える化されている領域なのに対して、「負」動産はどれだけの規模の負担を社会に強いるのか今のところほとんど明らかにされていない未認識の負債です。
都市計画が甘く土地利用を緩めて住宅地を際限なく広げていったことも、災害に際し罹災するリスクを高めたり行政効率を損ねたりして、社会に見えにくいコストを課しています。(しかも今この時も引き続き積みあがり続けているという・・・)

何ともお先真っ暗な領域ですが、見ぬふりをして放っておいてはツケが大きくなる一方。まずは自分の実家の終活からだけでもスタートしたいと思います。