2019年読んだ本まとめ&おススメ7選

2019年も残すところあと2日。ということで毎年恒例の今年読んだ本の振り返りをしてみたいと思います。

 

1.読んだ本まとめ

読んだ本をジャンル分けすると下のようになりました。

  • 移民・難民・・・外国人の子ども白書(著:荒巻重人)、ふたつの日本(著:望月優大)、奴隷労働(著:巣内尚子)、憎しみに抗って(著:カロリン・エムケ) ほか
  • テクノロジー・・・AIと憲法(著:山本龍彦)、アントフィナンシャル(著:廉薇)、アフターデジタル(著:藤井保文) ほか
  • SNS・メディア論・・・フィルターバブル(著:イーライ・パリサー)、デジタル・ポピュリズム(著:福田直子)、戦前日本のポピュリズム(著:筒井清忠) ほか
  • 民主主義・・・民主主義にとって政党とは何か(著:待鳥聡史)、日本の地方政治(著:曽我兼悟)、一般意志2.0(著:東浩紀)、 選挙制を疑う(著:ダービッド・ヴァン・レイブルック) ほか
  • マーケティング・・・ファンベース(著:佐藤尚之)、「つながり」の創り方(著:川上昌直)、僕らはSNSでモノを買う(著:飯高悠太)、ジョブ理論(著:クレイトン・クリステンセン)、なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか(著:田中道昭、牛窪恵) ほか
  • 地域マネジメント・・・老いる家崩れる街(著:野澤千絵)、世界の空き家対策(著:米山秀隆)、観光公害(著:佐滝剛弘)、凡人のための地域再生入門(著:木下斉) ほか
  • 子育て・・・私たちは子どもに何ができるのか(著:ポール・タフ)、父親の科学(著:ポール・レイバーン)、0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書(著:落合陽一) ほか
  • 小説・・・万波を翔ける(著:木内昇)、カザアナ(著:森絵都)、1R1分34秒(著:町屋良平)、神様のカルテ0(著:夏川草介) ほか

大づかみに眺めてみると、

『だんだんスカスカになっていく日本でどうやって生きていこうね?』

ということを考える内訳になっていたんじゃないかと思いました。

働き手が減るのに移民・テクノロジーを取り入れて対応できる/するのか?とか、
空き家どうするんだ?とか、
再分配を含む社会制度をどうやって作っていくんだ?とか、
合意形成の方法やそこに向けたコミュニケーション、情報伝達はどうするんだ?とか、
ビジネスや子育てはどうやっていくんだ?とか、
そんなことですね。

2.おススメ本7

続いておススメの本ですが、今年は7冊をピックアップしました。

 

①FACTFULLNESS

 最初に取り上げるのはなんと言ってもこちら。

世界はイメージしているよりもずっと改善が進んでいるということをデータをもって教えてくれる一冊。でもすごく読みやすいです。今年1番の衝撃の本でした。世界の見え方が大きく変わるとともに、日本の位置取りについても考え直さざるをえないような経験でした。

 

②選べなかった命

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

 

 出生前診断にあたった医師が見落とした結果、障害を抱えた子どもが生まれ、わずか1か月半で我が子を失った夫婦が、医師を相手どり損害賠償請求の裁判を起こした。そこには子どもに対する損害賠償も含まれていた。それはつまり生まれた「不利益」に対する賠償を意味するーーそのような裁判の経過を追いながら、出生前診断や中絶をめぐり関わる当事者たちが直面する現実に迫っている本でした。

本文中で紹介されていた、出生前診断で異常の可能性ありと診断された女性の「ぎりぎり指一本のところで決断している」という言葉を目にすると、「命の選別だ」という非難がいかに現実感のない潔癖なものに過ぎないかまざまざと思い知らされますし、他方完全に何でもありにしていいかと言われればそれも違う気がする…。

親や医療従事者といった当事者だけにのしかかっている重い判断に想像を働かせる材料になる一冊だと思います。

 

③父親の科学

父親の科学―見直される男親の子育て

父親の科学―見直される男親の子育て

 

母親との関係ばかりが注目されがちな子育てにおいて、父親が果たす役割に光を当てた本。意外にも父親の役割は大きくて、なんと生まれる前から影響は始まっている、ということが分かります。今子育て中のお父さんはもちろんのこと、これからお父さんになるかもしれない方、お父さんを部下に持つ上司にもぜひ読んでもらいたい一冊です。

 

④アントフィナンシャル 

一転して次はテクノロジー分野の一冊。アントフィナンシャルというのは中国のアリババのグループでざっくり言うと金融機能を引き受けている会社です。日本でも○○pay元年となった2019年ですが、そもそも決済を押さえるとどんなことになっていくのか、という実例を、アリババグループの辿ってきた足跡から窺い知ることができます(いかに日本が緒についたばかりで隔たりが大きいのかも・・・) 。中国はデータが監理されるディストピアだからと目を背け続けるのはもったいなさすぎます。データ管理と便益をどうバランスさせていくか考えるうえでも本書はいい材料なのではないかと思います。

 

※ちなみに中国のさらに新しい動向をまとめたのが「アフターデジタル」です。アリババが作った実店舗がどういうコンセプトなのか、日本のネットスーパーと何が違うのかなどよく分かります。よければ合わせてどうぞ。

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

 

 

⑤デジタル・ポピュリズム

デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義 (集英社新書)

デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義 (集英社新書)

 

最新のデータサイエンスとSNSが手を携え、世論形成や人々の投票行動に影響を及ぼす様子を追っている本です。例として取り上げられているのは、主にアメリカやヨーロッパでの選挙ですが、日本でも同じような応用ができないはずがありません。自分をとりまく情報環境にどんなリスクが潜んでいるのか、知って情報に接するのと知らないで接するのとでは大きく違いが生まれるでしょう。心構えを持つという意味で、読んでみるといい一冊ではないかと思います。

 

⑥奴隷労働

奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態

奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態

  • 作者:巣内 尚子
  • 出版社/メーカー: 花伝社
  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: 単行本
 

 今や来日している技能実習生で最も出身者が多いベトナム。そのベトナムからは、出国前に多額の借金を背負って、技能実習生が日本にやってきているという現実があります。しかも技能実習生は基本的に受け入れ先の会社を選べない。そのため、返すまでは受け入れ先がどんな会社であろうと我慢せざるを得ない。いわば借金をかたにとられて奴隷状態に置かれている実習生が少なからずいる、ということです。

本の中では岐阜県のアパレルメーカーで働いているという実習生の例が取り上げられていましたが、彼ら・彼女らが作った製品が自分たちの身近で売られているかもしれないし、もしかしたら買ってさえいるかもしれない。これはどこか遠い離れたところの話ではなく、自分たちに直接つながっている問題であるーーそう気づかせてくれる本だと思います。

 

⑦万波を翔ける

万波を翔る

万波を翔る

 

最後は読んだ小説から一冊。時は幕末。傾きかけた徳川幕府の外国方(諸外国と折衝にあたる役所)に勤める下僚が、開国、諸条約の締結、明治維新にかけてすったもんだ奮闘する様子を描いた小説です。志士や政権の中枢にいた幕閣でなく、外国方という新設のどちらかというえばマイナーな部署の、しかも中級~下級の役人の目線を通じているところがとても新しく、一気に二日くらいで読み切ってしまう面白い物語でした。

部下が練り上げて持って行った案をさも自分が思いついたかのように語る上司や、外国との折衝中に「自分は本件担当ではない」と言い放ちさじを投げてしまう上司、また国として一枚岩で外国に当たらなければならないのに抜け駆けをしようとする他藩(つまりは薩摩藩ですが)など、今に生きるサラリーマンが読んでも「あぁ、あるよね」と同情を寄せてしまうようなシーンがたくさんあります。日経新聞の夕刊に連載されていたそうですが、確かにぴったりな内容です。働く人の息抜きにぜひどうぞ。

 

以上メジャーな本も含まれていますが、もしまだ読んでないものがあってもしよければぜひ読んでみて下さい。

 

今年も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

また来年お会いしましょう。笑