初めてマニラのスラムに行ったとき感じたこと

“スラム”と聞いて実際どんなところかイメージがわきますか?

映画『スラムドッグ$ミリオネア』に出てきたインド・ムンバイの雑然とした街とか、ちっちゃい家がひしめき合って建ち並ぶブラジル・ファベーラの丘とか、そんな感じでしょうか。

大学4年生の夏、途上国のことについて本で読んだりして勉強していた自分が、初めて身をもって“途上国”を体験したのが、当時取っていた授業の先生が連れて行ってくれたマニラのスラムでした。
そこは、川沿いの誰も住んでいなかった土地に、マニラよりずっと南の方の貧しい地方から人が移って来て住みついた結果できた街区でした。いわゆる不法占拠地区ってやつです。

ちょっと時は下ってからのものになりますが、こんな感じ↓のところです。

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どうですか?
思っていたより整って見えるかもしれませんね。自分もそう思いました。色々腹くくって行ったんですが、思ってたより全然大丈夫だな、と。笑

最初に住み始めてから何十年と経っていたり、色々なNGO等からの支援も入っていたりして、徐々に環境が良くなってきた結果こうなったものなので、確かに同じマニラの他のスラムに比べたら比較的整っている方ではあったんだろうな、と思います。

移り住んできた当初はゴミ拾いで生計を立てている人たちが多かったのですが、自分が初めて行った頃には、工場労働者、警察官、自治体の現業部門(主に街の清掃)など、常勤の仕事を持っている人たちも出てきていました。(とはいえ、引き続きゴミ拾いをしている人たち(子どもも含む)も、当然のことながらまだいたのですが…。)

自分が行ったこのスラムには、“サント・ニーニョ”=聖なる子という名前にたがわず、子どもがめちゃくちゃたくさんいました。毎年訪れるこのスタディーツアーを、現地の子どもたちも年に1回のイベントとしてとても楽しみにしているようで、ホームステイで滞在している間はほとんど子どもたちと共に過ごすことになりました。手を引かれてはあっちへ行き、こっちへ行き、それはそれは“手厚い”おもてなしを受けたものです。

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ただ、みんながみんな学校に通っているわけではなく、コミュニケーションは片言の英語とボディランゲージが主でした。まぁ、子どもたちとわいわい、と楽しく遊ぶ分には、それでも十分だったんですが…。

そんな中、ほぼ同い年くらいの、英語がとびっきり上手な女の子と出会い、やっとその地での暮らしなどについていろいろ話を聞くことができました。

いろいろ先回りして気は利くし、頭の回転も速いし、英語もうまいし、先生になりたいとかで確か単科大までは出ていたはずでしたが、そんな彼女でも定職には就けていなかったと思います。

元々持っているものとしたら自分なんかよりよっぽどデキる人材に違いなかったのですが、たまたま生まれた場所がマニラのスラムだったがために、自分の能力をやりたいように活かしきれない。

よくある話、と言えばそうなのかもしれませんが、当時の自分にとっては、「あ、これがそういうことなんだ」とハッとさせられた瞬間でした。

このスタディーツアーに参加するまで、大学の授業を受けたり自分でも本を読んだりして机上の勉強はしてきていました。
貧困であること、それは経済的な意味だけではなく、自分の潜在能力を発揮する機会を奪われていることをも意味する、ということも、アマルティア・センの本を読んだりして知識として知ってはいました。
ただ、その機会を奪われたリアリティーを生きる生身の実例に出会うことで、そんな『お勉強』なんかとは比べ物にはならないくらい、思いっきり深く腹落ちして、貧困ってこういうものだと実感したのです。

 

なんてもったいない!

本人にとっても自分のやりたいことを実現できないことは非常に辛い事でしょうし、これだけ優秀な人の働きを享受できないとしたら、それは世の中にとっても大きな損失になる。
誰も幸せじゃないじゃないか?

それができる環境にある自分はこれについて絶対何かをしないといけない。

 

これが、自分が初めてマニラのスラムに行って体感したことです。

 今自分が大切だと感じている「生き切る」ということのルーツはこの時得た実感に根ざしているんだな、と気付かされます。

一次情報の大切さは色んなところで喧伝されていますが、まさに自分で経験・体験してみることって本当に大事です。こういうきっかけを作ってくれた大学の恩師には改めて感謝したいと思います。今度会った時はちゃんとお礼を言おうっと。

 

余りに非日常なマニラのスラムで感じたことは他にもあるんですが、それはまた別の機会に!