2021年読んだ本おススメ4選&まとめ
2021年も押しせまってまいりました。
今年も読んだ本の中からおススメをご紹介します。
続けて読んだ本全体の振り返りを通して、今年どんなことを考えてきたのかもまとめてみたいと思います。
では早速おススメの本から!
1.存在しない女たち:男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く(著:キャロライン・クリアド=ペレス)
2021年一番インパクトがあったのは本書。
ジェンダーについては少なくとも自分の行動においては無配慮なことをしないようにと注意してきましたが、それでは全く足りないということを思い知らされました。
自動車の設計、都市計画の基礎となる交通量調査、薬の治験などさまざまな分野において女性が原データに含まれておらず、デザインや意思決定において不可視化されているがゆえに寿命に現れるくらい不利益を被っている、という指摘がこれでもかとされています。アンコンシャス・バイアスとはよく言われますが、気付かされると世界の見方が一変するような衝撃を受けます。
社会的なイシューを扱った本としても読めますが、ビジネスを考えるうえでも見過ごされているインサイトをつかむヒントになるのではないかと思います。無関係な人はきっと一人もいないテーマの本なので、ぜひ一人でも多くの方に手に取っていただきたい一冊です。
2.エンデの遺言―根源からお金を問うこと(著:河邑 厚徳)
サステナビリティへの関心の高まりから資本主義の問い直しがさかんになされています。その多くは経済成長至上主義を改めコミュニティや連帯を大切にせよという結論に至るように思いますが、「べき論」の域を出ない印象があります。
有名な児童文学『モモ』の著者として知られるミヒャエル・エンデは、利子の存在こそが私たちを経済成長へ追い立てるとし、時が経つとともに価値が減ずるお金に関心を寄せていました。(この視点が『モモ』にも反映されています)1999年にNHKで放送された同タイトルの番組を文庫化版したのが本書です。
経済成長至上主義を追い続けるのが持続的ではないとして、どうしたらそこから脱することができるのか方策を考えるうえでとても有効な補助線となる内容を含んだ一冊だと思います。
3.マザリング 時代の聖なる場所(著:中村佑子)
著者ご本人の妊娠出産期の身体感覚を記録することから始まり、ケアが必要な存在に寄り添うこと全般(それを著者は「マザリング」と呼ぶ)について考察を広げている一冊。およそ自分には経験できない身体感覚が言語化されていて、完全に新世界が開ける読書体験でした。それと同時に、乳幼児を連れて電車で移動する際に感じる居づらさなどを通じ、ケアする人/される人の居場所が普通の社会の中にいかにないか、またその言葉が奪われているかにも気付かされます。
個人的には、経済より優先させなければいけないのはケアなのではないかと考え始めるきっかけになった本なのでおススメさせていただきました。
4.絶唱(著:湊かなえ)
数少ない今年読んだ文芸書からは湊かなえさんの絶唱をおススメします。4章立ての小説で、各章別の主人公がトンガを舞台に接点を持ちストーリーが進んでいきます。湊かなえさんと言えば『往復書簡』のようにラストでの大逆転が圧巻ですが、本書も最終第4章で「はっ」とする、それも他の作品とも全く違う形で、展開をみせます。ネタバレになるのであまり詳しくは書きませんが、湊さんの意図を思うと「これを書いたのですね」と何度も心の中で語りかけずにはいられません。
深い小説が読みたい気分という方におススメの一冊です。
どうでしたでしょうか?
気になる本があったらぜひお手に取ってみて下さいね!
では、以下今年読んだ本総まとめと振り返りです。
種をまたいだケアが大事
最初のジャンルは経済、政治、社会分野。脱成長の先で、抑圧のない誰一人取り残されない社会を求める時、では人は何のために集まって社会を形成するのかしら?(コミュニティの範囲を超えて)ということを考えたくてこのジャンルの本を読んでいたように思います。
今のところは、ヒトという種を越えて動植物や自然も含めてよりよくケアすること、がその答えなんじゃないかと考えています。
【代替経済】
- ドーナツ経済学が世界を救う 人類と地球のためのパラダイムシフト(著:ケイト・ラワース)
- サーキュラーエコノミー実践 オランダに探るビジネスモデル(著:安居昭博)
- 田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 タルマーリー発、新しい働き方と暮らし (講談社+α文庫)(著:渡邉 格)
- エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)(著:河邑 厚徳)
- 人新世の「資本論」 (集英社新書)(著:斎藤 幸平)
- 世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学 (NewsPicksパブリッシング)(著:近内悠太)
- 武器としての「資本論」(著:白井 聡)
- ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論(著:デヴィッド・グレーバー)
- 美術、市場、地域通貨をめぐって (水声文庫)(著:白川 昌生)
【ケア】
- マザリング 現代の母なる場所(著:中村佑子)
- 縁食論(著:藤原辰史)
- 交わらないリズム: 出会いとすれ違いの現象学(著:村上靖彦)
- 心はどこへ消えた?(著:東畑 開人)
- まとまらない言葉を生きる(著:荒井 裕樹)
- 「利他」とは何か (集英社新書)(著:伊藤 亜紗)
- ケアのたましい 夫として、医師としての人間性の涵養(著:アーサー・クラインマン)
【コミュニケーション】
- NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版(著:マーシャル・B・ローゼンバーグ)
- LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる(著:ケイト・マーフィ)
このLISTENは、これから自分が老害とならないようにするにはどんなスタンスを取ればいいのか考えるいいヒントになりました。何しろ最近ディスプレイの細かい字を読むのがつらくなってきたこともこれあり、これからは目より耳を活かしていきたいと思います。
【政治】
- ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか??民主主義が死ぬ日 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-13)(著:ベンジャミン・カーター・ヘット)
- コロナ危機の政治-安倍政権vs.知事 (中公新書, 2620)(著:竹中 治堅)
【サステナビリティ】
- 「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる―――赤字知らずの小さなベンチャー「日本環境設計」のすごいしくみ(著:岩元 美智彦)
- このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景(著:滝沢 秀一)
マシンガンズというコンビで芸人でもある滝沢秀一さんが、副業で従事するゴミ清掃員の仕事を通じて感じる社会の矛盾を描いた本。毎日のように行っているゴミ捨て・ゴミ出し、さかのぼっては消費のあり方を考え直すきっかけになる一冊です。(次の続編も面白いです)
- やっぱり、このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと(著:滝沢 秀一)
- 世界は食でつながっている You and I Eat the Same(著:MAD)
- FOOTPRINTS(フットプリント) 未来から見た私たちの痕跡(著:デイビッド・ファリアー)
- 最近、地球が暑くてクマってます。 シロクマが教えてくれた温暖化時代を幸せに生き抜く方法(著:水野敬也)
- DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法(著:ポール・ホーケン)
- 日本のSDGs:それってほんとにサステナブル?(著:高橋 真樹)
【自然再生】
【ジェンダー】
- 存在しない女たち: 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く(著:キャロライン・クリアド=ペレス)
- ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理(著:ケイト・マン)
【格差】
- 正義と差異の政治(サピエンティア) (サビエンティア)(著:アイリス・マリオンヤング)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か?(著:マイケル・サンデル)
- 海をあげる (単行本)(著:上間 陽子)
- 裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)(著:上間陽子)
- 二番目の悪者(著:林 木林)
- 釜ヶ崎合唱団<労働者たちが波乱の人生を語った>(著:釜ヶ崎炊き出しの会
【子育て】
- 子育ての経済学:愛情・お金・育児スタイル(著:マティアス・ドゥプケ)
「生存競争」教育への反抗 (集英社新書)(著:神代 健彦) - これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン(著:太田 啓子)
- ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)(著:広瀬 友紀)
- 子どもの算数,なんでそうなる? (岩波科学ライブラリー 302)(著:谷口 隆)
土地の風土と旅
コロナも2年目となり、改めて旅ってなんだ?ということを考え直しました。
【風土】
- 三澤勝衛著作集 風土の発見と創造〈3〉風土産業(著:三澤 勝衛)
風土学ことはじめ(著:谷川健一) - 風土学序説―文化をふたたび自然に、自然をふたたび文化に(著:オギュスタン ベルク)
- まちを視る風土を活かす (学陽選書)(著:童門 冬二)
- 人類がたどってきた道 “文化の多様化"の起源を探る (NHKブックス)(著:海部 陽介)
- 日本人はどこから来たのか? (文春文庫)(著: 海部陽介)
- 文明の生態史観 (中公文庫)(著:梅棹 忠夫)
【旅】
- 旅する哲学 ―大人のための旅行術(著:アラン・ド・ボトン)
- 旅の効用: 人はなぜ移動するのか(著:ペールアンデション)
- 0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語(著:岡田悠)
- パッケージツアーの文化誌(著:吉田 春生)
【地方】
- 日本はどこで間違えたのか: コロナ禍で噴出した「一極集中」の積弊 (KAWADE夢新書)(著:藤山浩)
- 半農半Xという生き方【決定版】 (ちくま文庫)(著:塩見 直紀)
- 地方の論理 (岩波新書)(著: 小磯修二)
- 福島モノローグ(著:いとうせいこう)
【島】
- 何もなくて豊かな島―南海の小島カオハガンに暮らす (新潮文庫)(著:崎山 克彦)
- 危機の時代こそ 心豊かに暮らしたい(著:石田 秀輝)
- 離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち(著:朴 順梨)
- 離島の本屋ふたたび 大きな島と小さな島で本屋の灯りをともす人たち(著:朴順梨)
- 屋久島発、晴耕雨読(著:長井 三郎)
その他
今年も人文系が少なくなってしまいました・・・
来年こそはもうちょっと小説読みたい!
- 未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則(著:馬田隆明)
- トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント)(著:小林 傳司)
- レンブラントの身震い (新潮クレスト・ブックス)(著:マーカスデュ・ソートイ)
- スマホ脳 (新潮新書)(著:アンデシュ・ハンセン)
- 和算-江戸の数学文化 (中公選書 114)(著:小川 束)
【ビジネス】
- ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと(著:小山田 育)
- 経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力(著:バーンド・H. シュミット)
- ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考(著:高橋祥子)
- サーバントリーダーシップ(著:ロバート・K・グリーンリーフ)
- プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる(著:尾原 和啓)
- 三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾(著:近藤 康太郎)
【哲学】
【文芸】
【国際】
- 人間の土地へ (集英社インターナショナル)(著:小松由佳)
長々とお付き合いいただきありがとうございました!
また来年もたくさんの良書と出会えることを楽しみにしています。
では、皆さん良いお年を!