2019-01-01から1年間の記事一覧

2019年読んだ本まとめ&おススメ7選

2019年も残すところあと2日。ということで毎年恒例の今年読んだ本の振り返りをしてみたいと思います。 1.読んだ本まとめ 読んだ本をジャンル分けすると下のようになりました。 移民・難民・・・外国人の子ども白書(著:荒巻重人)、ふたつの日本(著:望…

居るのはつらいよ(著:東畑開人)を読みました

臨床心理学の博士号を取った著者が、いざ臨床でセラピーをしたいと沖縄のクリニックへ飛び込んだ。そこはデイケアを併設していて、クリニックでのセラピー(カウンセリング)とデイケアでのケア、両方に従事する中でケアとは何か、セラピーとの違いとは何か…

エクソダス(著:ポール・コリア―)を読みました

移民についての議論は多くの場合、「受け入れ反対!」と「受け入れ容認!」という相容れない二つの立場の激突のようになりやすい。でもこれはともに極端なスタンスで、そこに欠けているのは「どのくらい」「どのように」という”How"の議論であるというのが著…

空き家に関する本を読みました

去年献本頂いた「新築がお好きですか?」を読んで以来気になっていたテーマのひとつが「空き家」。 uchiyamatakayuki.hatenablog.com 読む本のすき間がちょうどぽっかり空いたので、読みたいリストに入れていた関連書をまとめて読んでみました。 緩い土地利…

「家族の幸せ」の経済学(著:山口慎太郎)を読みました

サブタイトルにもありますが、結婚、出産、子育てなど家族をとりまく諸制度と各主体の選択の関係をデータに基づいてひも解き、どういった制度が「家族の幸せ」をもたらすのか、を分析した一冊です。 まことしやかにしやかに語られ、一般的に信じられている事…

「いいね!」戦争(著:P・W・シンガー、エマーソン・T・ぶるっキング)を読みました

TwitterやFacebookといったSNSがいかに文字通り「兵器化」してきているか、現状を概説している本です。ロシアによるウクライナでの軍事作戦や、イスラエルとパレスチナの紛争などを例にSNS上での情報戦が、今や新たな戦線として開かれている様子が描かれてい…

選挙制を疑う(著:ダーヴィッド・ヴァン・レイブルック)を読みました

今の時代はこれまでになく民主主義への支持は高まっているのにも関わらず、 民主主義への信頼(政府、政治家、メディアなどへの信頼)は低下しているーこの逆説的状況を”民主主義疲れ症候群”とし、その原因は選挙型代議制民主主義に求められる。選挙型に代わ…

なぜ脳はアートがわかるのか(著:エリック・R・カンデル)を読みました

「還元主義」を鍵概念にし、美術史(特に抽象画にいたる絵画)とそれを鑑賞する脳の働きを解説した本。 抽象画ってよく分かんないな、どういうつもりでこういうの描こうと思ったんだろうな、と常々疑問に感じていたのですが、本書を読んでその成立の背景がよ…

奴隷労働ーベトナム人技能実習生の実態(著:巣内尚子)を読みました

今や中国を押さえ技能実習生として日本に滞在している人数が一番多いベトナム。そのベトナムからやってきた技能実習生が置かれた状況を取材した一冊です。 本書を読むと、ベトナム人技能実習生が、なぜタイトルの通り「奴隷労働」と呼ばざるを得ない状況に追…

暴力と不平等の人類史(著:ウォルター・シャイデル)を読みました

人類が農耕を始めた昔からリーマンショック後までを行ったり来たりしながら、不平等がどんな変遷をたどってきたのか軌跡を巡る一冊。不平等はどんな時に大きくなるのか、縮小させる要因は何があるのか、考察しています。 本書によれば、不平等は秩序が安定し…

アフターデジタル(著:藤井保文、尾原和啓)を読みました

デジタルがデフォルトになっていく社会とビジネスはどんなものになるか、既にアフターデジタルに突入している中国の事例をもとに紹介・考察している一冊です。 アフターデジタルというのは 、デジタルの次に何が来るか?という意味ではなく、本書副題の通り…

暇と退屈の倫理学(著:國分浩一郎)を読みました

なぜ人は退屈するのか?退屈とどう付き合っていけばいいのか?という問いに向き合った本。退屈の起源を系譜学によって辿ったり、経済史の中での退屈の位置づけの変遷を見たり、ハイデッガーやユクスキュルを引きながら哲学的に考究したりしています。 人は高…

一般意志2.0(著:東浩紀)を読みました

2009年から2011年の春にかけて1年半、講談社の広報誌に連載した論考をまとめた本。それはつまり東日本大震災が起こる同月の頭に連載が終了したということなのですが、一見極めて突飛に見える新しい民主主義の可能性を模索したこの論考は、著者曰くまさにあの…

國分功一郎さんと山崎亮さんの対談を読みました

「来るべき民主主義」に続けて國分功一郎さんの著作を読んでいたところ、まるで山崎亮さんとの連続対談を視聴しているかのような読書体験になりました。 1冊目の「民主主義を直感するために」は、2010年以降の國分功一郎さんの評論集。その後半の対談の一章…

来るべき民主主義(著:國分功一郎)を読みました

本書の副題にもなっている小平市都道328号線計画の見直しを求める市民活動に参加した著者が、その体験もふまえて近代政治哲学の源流にさかのぼって民主主義に再考察を加えた一冊。 小平市都道328号線をめぐる詳しい経緯は本書にゆずりますが、50年前に策定さ…

民主主義にとって政党とは何か(著:待鳥聡史)を読みました

本書に先立つこと2冊、戦前日本のポピュリズムとメディアの関係に関する本を読んでいました。そこで語られていたことは、政党政治をバイパスすることは、権力による大衆の操作を容易にする危険性があるということでした。 uchiyamatakayuki.hatenablog.com …

日本の地方政府(著:曽我兼悟)を読みました

どこで何やっているのかイマイチ分かりにくい「地方自治体」について、①執政制度のあり方(議会と首長・行政の関係)、②住民との関係、③地域社会・経済との関係、④地方自治体間の関係、⑤中央政府との関係、から解説した本。 イマイチどこで何やっているか分…

第二次世界大戦時のメディアと政治に関する本を読みました

ここ最近ビッグデータ×機械学習により進むフィルターのパーソナライゼーション、ターゲティング広告、「ニュース」など、現代の情報環境が個人の意思や政治的選択にどんな影響を及ぼしてきたかというテーマの本を読んできました。 uchiyamatakayuki.hatenabl…

アパレル・サバイバル(著:齋藤孝浩)を読みました

いつからともなく衣食住を手の届く範囲で、つまり匿名的な市場を通じてではなく、有名性のある関係の中で賄えるようになりたいなぁと感じるようになってきました。既存の市場や流通システムが何らかの不全を起こした場合でもサバイブできるようにとか、ほじ…

FACTFULLNESS(著:ハンス・ロスリング)を読みました

もともと医師出身で後に公衆衛生の研究者に転じた著者は、知識をアップデートし続け、データに基づき世界を正しく知ることの大切さを繰り返し説いてきました。名前で検索すればTEDでのスピーチもいくつもヒットします。そして本書でも古いままのイメージやバ…

「アントフィナンシャルー1匹のアリがつくる新金融エコシステム」を読みました

日本より断然進んでいる中国のキャッシュレス化の立役者、アントフィナンシャルの出自からこれまでをまとめた一冊。「アリペイやってるとこでしょ」とだけ思っていたら大間違い、という話でした。 スタートこそアリババ上での売買に伴う信用保証からであるも…

誰も農業を知らない(著:有坪民雄)を読みました

現役の専業農家の著者が農業の現実を解き明かしつつ、農業をめぐる各種提言や昨今の改革に批判的検討を加えている一冊。これだけ農地が余ると言われ続けていると、いつかどこかで関わることもあるかもしれないとなんとなく考えていたので、興味を持って読ん…

AIと憲法(編著:山本龍彦)を読みました

AIの勃興・隆盛が、憲法で規定されている原理や理念に投げかけている問いについて考察した本です。AIやビッグデータ関連の分野ではおなじみの選挙を含むターゲティング広告や信用スコアの話から、珍しいところでは教育・裁判制度まで広く取り上げられていて…

デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義(著:福田直子)を読みました。

最新のデータサイエンスとSNSが合わさって、世論形成や人々の投票行動にどのように影響を与える可能性があるかを紹介した本です。著者ご自身がドイツ在住でいらっしゃるということもあって、ネット選挙最先端のアメリカに加え、ドイツやヨーロッパの事例も取…

フィルターバブル ― インターネットが隠していること(著:イーライ・パリサー)を読みました

インターネット体験のパーソナライゼーションとその弊害について説いた一冊。 検索、ページ閲覧、クリック、いいね!、購買などなどインターネット上のあらゆる振る舞いはトラッキングされ、データとして蓄積され、分析され、画面の向こう側から見た「わたし…

ソーシャルメディアと<世論>形成(著:遠藤薫)を読みました

ソーシャルメディア、世論形成それぞれにまつわるトピックやケーススタディを広く取り揃えている一冊です。 誰もが発信者になれるソーシャルメディアが発達したことで、旧来のマスメディアが情報伝達を寡占する時代が終わり、クロスメディアが当たり前となる…

ふたつの日本「移民国家」の建前と現実(著:望月優大)を読みました

ニッポン複雑紀行で編集長を務め、在留外国人や移民のルーツを持つ子どもたちの様子をリポートしてきた望月優大さんの手になる「移民」についての新書が出たので読んでみました。 本書で望月さんは、留学、技能実習、日系人など、日本が本音(=雇用調整しや…

こうして世界は誤解するージャーナリズムの現場で私が考えたこと(著:ヨリス・ライエンダイク)を読みました

オランダのメディアの特派員として中東に駐在した著者が、報道の現場で起きていることを包み隠さず明かしている一冊。ポスト・トゥルースが騒がれだしたのは、トランプ大統領が誕生する前後くらいからのことでしたが、それよりもはるか昔からメディアが伝え…

世界の核被災地で起きたこと(著:フレッド・ピアス)を読みました

「水の未来」や「在来種は本当に悪者か?」の著者、フレッド・ピアスの新刊が出たので読んでみました。読んだ過去2冊もそうでしたが、フレッド・ピアスは切り口というか視点の設定がとっても素晴らしいです。 本書の原題は"Fallout"。核兵器の使用後や放射能…

知性は死なない・中国化する日本・日本人はなぜ存在するか(著:與那覇潤)を読みました

元日の『日本のジレンマ』スペシャルでお見掛けして、すごく高いコメント力・モデレート力でどんな方だろう?と気になっていた與那覇潤さんの著作3冊「知性は死なない」「中国化する日本」「日本人はなぜ存在するか」を読みました。 3冊通してざっくりまとめ…