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「「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済」(著: 小川さやか)を読みました

読了!これは面白かった!

「アフリカの都市インフォーマルセクターで暮らす人々は、多業種の仕事を渡り歩き、次々に事業を試し、誰かの稼ぎで食いつなぎ日々生きている。不確実な状況を機会と捉え、どんな状況も生き抜く自信を持っている。こうした生き方は、過剰に計画的で効率主義的な主流経済にアンチテーゼをつき付けている。」(140字)

著者は、主にタンザニアをフィールドに研究されてきた文化人類学の研究者。
タンザニアの都市で、商人や、主に中国製品の輸入業に携わる、いわゆるインフォーマルセクターで暮らす人々を観察して著者が触れた「豊かさ」についての本です。

彼ら・彼女らは、せっかく手に入れた事業のノウハウ(例えば古着商を始めるための仕入れ先など)を簡単に周りの人たちと共有し、結果あっという間にその事業は立ち行かなくなるのですが、その時偶然あったつてで他の事業や仕事を始めたりしています。
こういう、とりあえずやってみるとか、硬直的な組織を作るのでなくバラバラの個人で連携していくとか、家族・知り合いの誰かがひと山当てたらそれを頼ってお金を借りたり出資してもらったりするとか、多様な生存戦略を追求することで、彼ら・彼女らは かえってLiving for Today、まさに今を生き抜く強さと自信を手に入れている、と指摘します。

ひるがえって、一般には主流にあるといわれているフォーマルセクターの経済では、計画と効率を重んじて仲間を軽んじ、将来のために今を犠牲にし、一歩でも踏み外して不確実性の中に落ち込むのを恐れいている。

両者のあり方を比べたとき、Living for Todayを実践しているインフォーマルセクターの方が、実はしなやかで豊かで人間らしいんじゃないか?しかも常に過当競争気味なので、資本主義の原則も働いているし、、、というのが本書の主訴です。

哲学や経済学まで取り入れながら当たり前の「生き方」を問い直す、それも実地の研究も取り入れつつ、っていう、まさに自分好みの切り口の本で、とっても堪能させてもらいました。

とりあえず試してみてダメなら変えてるとか、バラバラの個がゆるやかに連携するとか、シリコンバレー他でのスタートアップ成功のコツについて書かれているようなことと共通していて面白かったなぁ。
あと、交易相手として中国のコピー携帯を作ったりしている山寨の様子も出てきましたが、これもいつか単なるコピーじゃなくてイノベーターになる時が来るんだろうな、という予感がしました。

単にタンザニアの人々の様子が伺えるだけでも面白いですし、色んな読み方ができる一冊。
オススメでございます~。

 

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)