ソーシャルアートラボー地域と社会をひらく(編:九州大学ソーシャルアートラボ)を読みました
鹿児島のゴルフリゾートでのアートイベント インターナショナルゴルフリゾート京セラ:ART VACATION 2018 in IGR の企画・構想に向けた材料集めをしているとき、同じ九州内で芸術文化領域を取り扱っている大学がないかしら?とリサーチして、行きついたのが本書の編纂主体である九州大学ソーシャルアートラボでした。
図書館の新書コーナーで偶然その名を見かけ、どんな活動をしているラボのか気になり、思わず本書を手に取りました。
本書によれば、九州大学ソーシャルアートラボは、社会の課題にコミットし、人間どうしの新しいつながりを生み出す芸術のあり方を「実践」「教育」「研究」を通じて模索し、その成果を「提言」としてまとめる活動を行っているところだそうです。
そのラボが八女市の山村で行ったアートツアー・アートプロジェクト、地域資源である博多織にインスピレーションを得て上演された現代神楽、八女の山村とのつながりを福岡市の中心地・大名に現前させたアートプロジェクトの例を題材に取り上げ、これら取り組みに関わったアーティストやスタッフがいかにsocially engaged artをデザインするかを考究している一冊でした。
アーティスト、キュレーター、研究者、プロジェクトを受け入れた地元のNPOなど、いろいろな視点からアートプロジェクトの設えが検討されていて、とても興味深い内容でした。
中でも印象に残ったのは本書冒頭の中村美亜さんの『アートと社会を語る言葉』と、藤浩志さんのインタビュー『アートとは?』の2編。
- アートとはなにもハイアートだけをさすものではなく、日常に常に疑問を持ち感じた違和感をどうにかしようともがくことが表現につながっていく。
- アートは受け手とのコミュニケーションであり、アフォーダンスを与えるものである。
- アートを共創するとき、人は生かされていると感じエンパワーされる。
- 人は人と表現活動を共有することで、新しい共有の価値観を生み、それを大切だと思う仲間を作り出す。
本書41ページの下記図はとてもよくまとまっていて、ぜひ記憶に残したいと思いました。
特に現代神楽の種明かしがだいぶ面白かったので、いつか自分でもソーシャルアートラボさんのイベントを体験しに行ってみたいと思います。
ソーシャルアートラボ 地域と社会をひらく (文化とまちづくり叢書)
- 作者: 中村美亜,大澤寅雄,朝廣和夫,長津結一郎,高坂葉月,ジェームズ・ジャック,知足美加子,藤枝守,池田美奈子,尾本章,小森耕太,楠本智郎,尾藤悦子,花田伸一,藤浩志,呉瑪悧,鷲田めるろ,小山田徹,九州大学ソーシャルアートラボ
- 出版社/メーカー: 水曜社
- 発売日: 2018/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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