FACTFULLNESS(著:ハンス・ロスリング)を読みました

もともと医師出身で後に公衆衛生の研究者に転じた著者は、知識をアップデートし続け、データに基づき世界を正しく知ることの大切さを繰り返し説いてきました。名前で検索すればTEDでのスピーチもいくつもヒットします。そして本書でも古いままのイメージやバイアスなど10の要因によって、私たちの世界に対する見方がいかに歪んでいるか、現実のデータを示しながら指摘しています。

 

正直に告白すると、本書を読んでかなりのショックを受けました。
もともと国際協力の仕事をしていたこともあり、関心をもってニュースを追っているので世界の様子をそこそこ分かっているつもりだったのですが、さっぱりでした。旧態依然としたイメージにとらわれていたことがよく分かりました。

 

例えば本書冒頭にはどのくらい正確に世界のことを把握しているか測定するためのクイズがあります。答えを知ってギクッとしたクエスチョンは下記のものたちです。(答えは本書に譲りますので、ぜひご自身の目で確かめてみて下さい。) 

 

・現在低所得国に暮らす女子の何割が初等教育を修了するでしょう?(20%/40%/60%)

・世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?(50歳/60歳/70歳)

・世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?(9年/6年/3年)

 

もはや「私たち」と「あの人たち」の二分法は正しくないようです。本書では、1$/day以下のレベル1、8$/day以下のレベル2、32$/day以下のレベル3、それ以上のレベル4の4つに分けた方がより正しく世界を知ることができると提案していました。このうち真ん中のレベル2とレベル3で人口が一番多くなっていて、「先進国」と「途上国」に二分されるというより連続的な分布になってきているのだそうです。

 

たとえちょっとずつの前進でもそれが積み重なって世界がよくなってきている、断絶するよりも接近・収れんする方向に向かっている、というのが世界の実情だと知ると、いろんなことの見え方がだいぶ変わってきます。

 

・人口と所得が増えていくアジアはレベル感(単価や財の種類)としてもそう離れていない市場になっていくのではないか?

・国際協力の重心は、はるかに立ち遅れた人たちの福祉の向上から、志向や嗜好が近しい人たちとの共栄に移っていくのではないか?

・SDGsの達成に向けてはビジネスを通じて継続的な取引関係に包摂していくことがより重要になるのではないか?
 

などなど。端的に言ってしまえば、援助―被援助という図式はもう古いのかもしれない、そう思わされました。(もちろん、まだまだそういったアプローチが必要な地域・分野も残っていると思います。)

 

どういう世界、どういう環境が到来しているのかという世界観を大きく変えてくれて、その中で自分だったら何をすべきなのか再考を促してくれるような貴重な一冊となりました。著者渾身の遺作、ぜひご一読下さい。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

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