アフターデジタル(著:藤井保文、尾原和啓)を読みました

デジタルがデフォルトになっていく社会とビジネスはどんなものになるか、既にアフターデジタルに突入している中国の事例をもとに紹介・考察している一冊です。

アフターデジタルというのは 、デジタルの次に何が来るか?という意味ではなく、本書副題の通りデジタルが当たり前になりオフラインがなくなった時代のことを指しています。

 

アリババが運営するスーパーマーケット「フーマー」や、タクシー配車アプリの「滴々(ディディ)」、カーライフ全般をカバーする「ビットオート」、平安保険など様々な事例が取り上げられていますが、総じて言えるのはユーザーエクスペリエンスを上げることで顧客に使い続けてもらい、接点を増やすことで行動データをなるべく多くとって次のサービス提供の改善に反映させるというサイクルを回していることです。

これは、オフラインで提供していたサービスをオンライン化しようというのとは発想がまったく異なっています。もはやオンラインとオフラインはそれぞれ別のチャネルでなく統合していて(Online Merge with Offline:OMO)、どちらも顧客の一連のバリュージャーニーの中での接点として捉えられているのです(それぞれどんなUXを提供するかで特徴というか分業はあります)。

 

OMOの世界においてカギになってくるのは、どれだけ多くの行動データを集められるかであり、そのためにUXの絶え間ない改善と、様々なサービスが組み合わさったエコシステムが形成されることになります。(例えば平安保険が提供する病院予約システムなど)
芝麻信用にしてもその他行動データの収集にしても、一歩間違えれば自分のデータが集められて知らないうちに勝手に利用されるというディストピア的イメージに陥りがちですが(実際自分もそんなイメージをもっていました)、これだけユーザー起点でUX改善のループが進められれば(しかも競争的に)、サービスが提供してくれる便利さの方がデータ提供への抵抗感を上回ることもありえるんだな、と思うようになりました。

 

ペイメント問題で日本はいまだ2周遅れくらいな感じですが、よいUXによる顧客との接点確保と取得した行動データによるUX改善というループの発想は今からでも考えられるような気がしました。

 

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

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