暴力と不平等の人類史(著:ウォルター・シャイデル)を読みました

人類が農耕を始めた昔からリーマンショック後までを行ったり来たりしながら、不平等がどんな変遷をたどってきたのか軌跡を巡る一冊。不平等はどんな時に大きくなるのか、縮小させる要因は何があるのか、考察しています。

 

本書によれば、不平等は秩序が安定しレントや貿易収入が大きくなると拡大してきました。歴史上特に不平等が大きかった例としてローマ帝国時代が挙げられています。

一方、人類の歴史において不平等を大幅に軽減させてきたのは、戦争(総力戦であった第一次・第二次世界大戦)、革命、国家や社会体制の崩壊、疫病の「四騎士」であったと言います。これらに共通するのは既存秩序を根底から覆すほどの衝撃で、しばしば暴力的脅威を伴っていたことです。

これに対して、一般に不平等を軽減させると考えられている、平和的な土地・債務改革、教育、経済危機、民主主義、経済成長は、不平等を軽減させる場合とさせない場合両方がありました。これらが戦争の脅威と結びついている場合には、不平等を軽減させる傾向が強かったと言います。

 

これだけ知らされると何とも陰鬱な結論に聞こえますが、実際にそうだったので仕方がありません・・・。しかももっと暗くなることに、これからの世界ではますます不平等が広がりそうですが、上記の「四騎士」が現れることは考えにくく、国際的な協調を伴う税制や、所得移転によって拡大のペースを緩めることくらいしか期待できなさそうだというのが将来の見通しとして示されています。

 

いやぁ、なんとも後味の悪い読後感ですが、これだけ大量の歴史とデータで議論を展開されると、「そうだったんだねぇ」と受け止めざるを得ない感じです。

不平等の野放図な拡大を食い止めるため、どのくらい徹底的に制度改変をしなければいけなさそうかという覚悟を決めるうえでは参考になる一冊だったかな、と思います。

 

暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病

暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病