関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション(著:田中輝美)を読みました
東京にいても島根や地域づくりのことを学べるという「しまコトアカデミー」をケースに、 移住・定住のみを目指さず、多様な関わりしろを提示し、地域の課題・人と地域外の人をつなげられる関係案内所こそが今必要である、というのが本書のメインの主張。
人材をさらっていく先進地であるという印象の島根だけれど、移住・定住ありきではないリードの拡充に努めてきたからこその結果であったんですねぇ。
移り住むだけが地域とのかかわり方ではない。
PR・発信された内容のシェアや、イベントへの参加、特産品の購入など、関わり方は多様にある。
移住と違ってゼロサムゲームではない関係人口は、どの地域も増やせるし、どの人もなれる。
という指摘が本書でされていましたが、自分自身、移住体験ツアーのお手伝いをさせていただいた経験などを通じて、日頃感じてきていたことでした。
最近読んだ『弱いつながりー検索ワードを探す旅』(著:東浩紀)では、「観光客」というあり方は、本人にとって言葉になる以前のナマの体験をすることであり、新しい検索ワードの獲得や、動物的な反応の中での地域との連帯を抱くきっかけになると指摘されていました。
しかし、本書では、観光・交流だけでは、関わりたい・貢献したいというニーズに十分応えられないし、地域にしても交流疲れに陥って活動が瓦解してしまうこともあるとされています。
これはどう考えればいいのか?
思うに、地域側がおもてなししようと意識しすぎてよそ行きの装いで迎えるようなしつらえの観光・交流というのはお互いにアンハッピーで、むしろ普段の営みをともにする、その中で抱えている難しさも垣間見えるという観光・交流であれば、連帯のとっかかりになるんじゃないだろうか。
最近観光の業界ではDMOの設立が流行りになっています。
しかし、観光・交流というのは、関わり方の一類型(しかもかなり導入に近い)に過ぎず、関係案内所であれば包含しうるファンクションのように思えます。
それだし、継続性や発展性を考えると、関係案内所の方が断然面白い。
やり方次第ではふるさと納税だって絡めていける。
何に出資してもらうのか?
リターンの設定や伝え方など、どうすればつながりたい人とつながれるか?
東京で地方のDMO/DMC(のリエゾン)やるなら、拡大解釈して関係案内所まで目指した方が面白いんじゃないかと思いました。
関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション
- 作者: 田中輝美,シーズ総合政策研究所
- 出版社/メーカー: 木楽舎
- 発売日: 2017/10/24
- メディア: 単行本
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