地域が稼ぐ観光(著:大羽昭仁)を読みました

博報堂で文化人と旅をする”カルトラ”を立ち上げるなどし、のち独立した著者の経験を踏まえた地域×観光論。

 

タイトルにある通り、地域が観光を活性化する目的は「稼ぐこと」で、いくら人数だけを追いかけても仕方がない。
地域にゲストを招き入れてお金を使ってもらう仕組みができていなければ地域活性化にはつながらず、ゆくゆくは地域が立ち行かなくなり観光も消えてしまう。

 

そのお金を使ってもらう仕組みとして著者が推しているのが新価値を実現する観光体験プログラム。

新価値とは外部(=来る人)のモチベーションと地域に固有の資源を掛け合わせて、その土地が生みうる新しい付加価値のこと。

ネットにより生活者が自ら大量の情報を入手・発信できるようになった今、マスのマーケットはほとんど存在していないに等しく、小さなコミュニティーにターゲットを定め深く刺さる体験プログラムを提供しなければ、気づいても振りむいてももらえない。

情報の洪水の中、情報だけを届けようとするのはコスト効率的でなく、狭いコミュニティから実際に参加を得て、口コミで届くべき人に自然に届くようにする方がよい。

 

そんなこんなTipsやヒントが次々紹介されている本でした。

実際に携わっていらっしゃる事例の紹介もさることながら、本書で特に刮目なのが前半の観光をめぐる生活者の選好についての考察。レジャースポーツの衰退の度合いや、露出目的の観光PRがいかに届かないか、についての説明・分析が個人的には一番の気付きのポイントでした。

 

旅の目的地が元気に存続しなければ旅行産業自体も持続できないので、地域が稼ぐ観光を後押しすることは旅行会社にとっても中心的な課題です。

本書を読んで、少しずつでもこうした観光体験プログラムの共創に乗り出していかなければいけないと改めて感じました。

 

地域が稼ぐ観光 (Business Books)

地域が稼ぐ観光 (Business Books)