生きる技法(著:安富歩)を読みました
特に家族関係の悩みから、心身に不調をきたすほどの生きづらさを抱えた著者が、より生きやすく生きるための技法について15の命題を掲げている一冊です。
詳しくは本書に譲るとして、特に印象的だった命題3選は下記の通り。
「自立とは、多くの人に依存することである」
「愛は自愛から発し、執着は自己愛から生じる」
「自由とは、思い通りの方向に成長することである」
確かその文脈で引用されていたと記憶していますが、頼れる・顔を出せるコミュニティをたくさん持っていることがその人自身にとっての強みとなる、というのはアサダワタルさんの『コミュニティ難民のすすめ』に通ずるところがあります。
自分の足場がひと所しかないというのは、そこに忍従することを余儀なくされる恐れがあり、確かに自立性を損なう危うさを孕んでいます。
平野啓一郎さんのいう”分人”のように、多様な他者関係(とそれに対応した顔)の束である自分、という存在の方がしなやかな強さを持ちうるのでは、と常々考えています。
また、愛と執着の違いについての本書の説明もなるほど、と思わせる面白いものでした。
愛される=自分のそのままの存在で受け止められる・受け入れられること。
執着される=自分の人格のうち相手にとって都合の良い部分だけを切り取られて、他の部分は捨てられること、さらに相手にとって都合の悪い部分を持っていることに、罪悪感を抱かされること。
まずは自分自身をそのまま受け入れられているか(=自愛)、もしくは自己嫌悪を糊塗するために自己陶酔に陥っているか(=自己愛)の違いが、他人を愛することができるか・執着するかの分岐点になっている、ということです。
情報が氾濫し、SNSで過剰接続にさらされる今の環境下で、自分を守り生きていくためにこの”自愛”のメソドロジーはとても大切になっていくように思います。
教育の文脈でよく言われる自己肯定感を育むに近いかもしれませんが、大人になってからでも何らかのきっかけで”自愛”を見失いかけても取り戻すための my methodを、日頃からひとりひとりが見つけておく必要があるのではないでしょうか。
ご自身の経験に引きつけて書かれているということもあり、とても読みやすい一冊です。
自分が弱った時、あるいは周りに弱った人がいる時の備えとして、一読してみるといいんじゃないかと思います。