一九八四年(著:ジョージ・オーウェル)、評価の経済学(著:デビッド・ウォーラー、ルパート・ヤンガー)を読みました

お金の未来の本を読んだときに、今後は評価や信用がお金にとって代わっていく、という方向性が示されていました。いわゆる評価経済や信用経済というやつです。 それを目にした時、直感的にそれは息苦しい世の中になってしまうんじゃないかなぁと思ったので、…

”お金”について考える本を読みました

直接の引き金はたまたま入った本屋でたまたま手にしたBrutusの「親・お金の、答え。」がぴったりきたことがきっかけですが、いわゆる”法定通貨”を価値貯蔵・交換手段として求め続けることが今後果たしてどこまで有効なのだろうか?というのはずっとモヤモヤ…

アメリカ大都市の生と死(著:ジェイン・ジェイコブズ)を読みました

創造都市の本を何冊か読むと必ず言及されていた本書。やっと読むことができました。 より人間的で活気のある都市空間を守ろうと、市民活動家として画一的な当局の都市開発と渡り合ってきた経験もふまえ、都市開発は何を目指しいかに進められるべきかを論じた…

黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い(著:畠山理仁)を読みました

一般的には”泡沫候補”と呼ばれるような立候補者たちの選挙戦の様子を記録したルポルタージュ。 普段有力候補以外の「その他」として、政策的な主張やその背景にある問題意識を詳しく伝えられることのない候補者にも、ひとりひとり立候補せずにいられない理由…

TOKYO 0円ハウス 0円生活・独立国家のつくりかた(著:坂口恭平)を読みました

前々から気になっていた坂口恭平さんの本を2冊読みました。 「ホームレス」と呼ばれる人たちがいかにクリエイティブに、そしてそれぞれの人にとって本質的と思える暮らしをしているかを体当たりでレポートした「TOKYO 0円ハウス 0円生活」と、政府が・市場が…

あそびの生まれる場所(著:西川正)を読みました

著者の西川正さんは、埼玉県で市民活動・まちづくりを支援するNPO法人ハンズオン埼玉の常務理事を務められ、また地域の学童保育を運営するNPOでも理事を務めていらっしゃる方。その西川さんが、ご自身の経験も踏まえて、関わる人が自発的に/自由に「遊ぼう…

エルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告(著:ハンナ・アーレント)を読みました

ナチ体制下でユダヤ人の移送を差配する立場にあったアドルフ・アイヒマンは、敗戦後潜伏していたアルゼンチンでイスラエル諜報機関により捕らえられ、エルサレムに連行されました。そのエルサレムで開かれたアイヒマンに対する戦後法廷をハンナ・アーレント…

テレ朝会見で思うこと

「これはもう、構造的に限界なんじゃないか。」 福田元財務次官によるセクハラ被害を自社社員が受けていたという会見をテレ朝が深夜12時から開き(しかも自社では生放送せず)、「二次被害を恐れて公表しなかった」とのたまったと twitter で目にした時に感…

アンティゴネ・三文オペラ・子供の十字軍(著:ベルトレト・ブレヒト)を読みました

初めて「戯曲」というジャンルの本を読んでみました。 きっかけは恩田陸さんの演劇小説を読んだこと。恩田さんご自身も戯曲を書かれたとのことで、このジャンルに興味を持ちました。 中でもブレヒトを選んだのは、戦争、特にドイツの第二次世界大戦をモチー…

民主主義の条件(著:砂原庸介)、熟議が壊れるとき(著:キャス・サンスティーン)を読みました

政治分野の本を続けて2冊読みました。1冊は「民主主義の条件」(著:砂原庸介)、もう1冊は「熟議が壊れるとき」(著:キャス・サンスティーン)。 「民主主義の条件」は著者の近著「分裂と統合の日本政治」を読んで、さかのぼって読んでみたくて手に取りま…

潜伏キリシタンは何を信じていたのか(著:宮崎賢太郎)を読みました

2018年にも世界遺産登録と目されている、長崎・天草のキリスト教関連遺跡。その長崎・天草で、江戸時代の禁教を耐え忍び信仰を守ったとされる潜伏キリシタンたちが本当に信仰していたものは何だったのか?を考察した一冊です。 本書で著者は、潜伏キリシタン…

京大式DEEP THINKING(著:川上浩司)を読みました

元AI研究者で、今は不便益(不便さが生む利益)の研究に従事する著者の手になるより深く思考するための指南書。 「鉛筆による手書き」が生むひっかかりやダイレクトな体感が、反射的な浅い思考ではない、じっくり広がり・奥行きのある思考を生むのだそう。 …

うしろめたさの人類学(著:松村圭一郎)を読みました

エチオピアがフィールドの人類学者である著者が、エチオピアと日本を行き来する中で感じた「違和感」を手掛かりに、より公平な世界に近づくために各個人がどう他者と対峙すればいいかを考察・提案している一冊。 著者によれば「国家」や「市場」は一見個人の…

勉強の哲学 来るべきバカのために(著:千葉雅也)を読みました

グローバル化が進んだり、社会が断片化したり、AIがどんどんヒトの領域に入りこんできたりして、バカ=「話が通じない相手」が増えることが見越される中、その陥穽に陥らないようにするために私たちはどういう姿勢で学ばなければいけないのかーーーを説いた…

脳の意識 機械の意識ー脳神経科学の挑戦(著:渡辺正峰)を読みました

脳神経科学の動向を追いつつ、人の意識はどこから生まれるのか?という自然則に迫った一冊。脳神経科学の歴史と動向を幅広くカバーしていて、新書にしてはとても盛りだくさんの内容でした。 *自然則とは、「光速度不変の法則」のように、現にそうなっている…

クラシック音楽とは何か(著:岡田暁生)を読みました

ながら作業がしやすいから、無音より集中できる時があるから、など、なんとなくの理由で聴くというより聞き流しているクラシック音楽。 そもそも定義は何なんだろう、ドラクエのテーマソングはオーケストラが弾いてるけどクラシックではないよなとか、そんな…

戦争調査会 幻の政府文書を読み解く(著:井上寿一)を読みました

戦後幣原喜重郎の下、日本人の手により開戦と敗戦の理由を検証しようと設置された戦争調査会。結果的にはGHQの命により、最終報告をまとめるに至らなかったが、同調査会の集めた資料をもとに、著者が分析の続きを試みた一冊。 同調査会が行った関係者へのイ…

NEXTOKYO(著:梅澤高明、楠本修二郎)を読みました

DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA 2017 の記事(「高機能すぎる都市」の問題点は? 再開発が進む渋谷で失いつつある“街の心地よさ” - ログミー)をネットで読んだのがきっかけで手に取った一冊。 タイトルの通り2020年のオリンピックを越えて東京がよりよい都…

ゲンロン0-観光客の哲学(著:東浩紀)を読みました

昨年末読んだ『弱いつながりー検索ワードを探す旅』で提示された「観光客」という概念について、哲学的に掘り下げて検討を加えている一冊。 現在の世界はグローバリズム(=経済的・帝国)とナショナリズム(=政治的・国民国家)が併存しており、私たちは両…

チョコレートコスモス(著:恩田陸)を読みました

文章によって他の芸術分野の心震える瞬間を描写するという恩田陸の「越境モノ」の(多分)先駆け的な小説。 演劇が題材の本作は、新国立劇場のこけら落としの公演のためのオーディションに参加した二人の女優を軸にストーリーが展開します。クライマックスの…

渋谷に必要なのは「空き地」

東京に大雪が降った日。たまたま渋谷の明治通りからタワーレコード方面に山手線ガードをくぐろうとしてびっくりしました。そこにあったはずの宮下公園がきれいさっぱりなくなっていたのです。 工事のフェンスの向こう側に普段は見えることのない景色が広がっ…

分裂と統合の日本政治(著:砂原庸介)を読みました

著者の2009年から2015年発表の論文を下敷きにまとめられた本書。 日本で二大政党制が定着しない理由、わけても野党が政党としてのまとまりを欠き脆弱である理由は、政党システムの制度化が追い付ていないことに求められ、具体的には二元代表制と単記非移譲型…

貧困の戦後史(著:岩田正美)を読みました

太平洋戦争以降の日本において貧困がどのように捉えられてきたのか、定量的なデータをひきつつも、そのあらわれ方・「かたち」により着目しながら変遷を追った一冊。 本書により『時代区分ごとに貧困をこのように捉えていた』という貧困の「かたち」を大まか…

中庭の出来事(著:恩田陸)を読みました

『蜜蜂と遠雷』で久しぶりに読んで、同じような作品があるよと勧められた『チョコレートコスモス』を待つ間に読んだ一冊。 舞台をテーマにした本作、『蜜蜂と遠雷』と同じく、というか、より一層重層的でフラクタルな構造の小説だなぁと感じました。 演劇作…

空間の使い方を考える本5冊を読んで考えたこと

昨年から続いている探究の大テーマは、あまりに断片化が進む社会/世界が怖くって、どうやって共通の地平を持つ/作ることができるのだろうか?ということ。 正義論シリーズに続いて箸休め的に読んだつもりの関係人口関連の本も、人は複数地点にどう関りを持…

関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション(著:田中輝美)を読みました

東京にいても島根や地域づくりのことを学べるという「しまコトアカデミー」をケースに、 移住・定住のみを目指さず、多様な関わりしろを提示し、地域の課題・人と地域外の人をつなげられる関係案内所こそが今必要である、というのが本書のメインの主張。 人…

ライフ・プロジェクト(著:ヘレン・ピアソン、みすず書房)を読みました

イギリスで実施されてきた第1次から5次(1946年、1958年、1970年、1991年、2000年の各年生まれを対象)にわたる「コホート研究」の歴史、時の政権から受ける影響、逆に時の政策に及ぼした影響をたどったドキュメンタリー。 イギリスでは、同時期に生まれた子…

<弱さ>のちから ホスピタブルな光景(著:鷲田清一、講談社学術文庫)を読みました

弱いロボットの思考で引用されていたのがきっかけで手に取った本書。 尼僧や障碍者作業施設の運営者に始まり、ダンスセラピストや華道家、果ては風俗嬢まで、さまざまなケアの実践者へのインタビューを行った著者は、さらけ出された弱さに思わず手を差し出し…

2017年に読んだ本&お薦め5選

2017年も残すところあと24時間を切りました。ということで、今年1年の読書記録の総括とお薦め本5編をピックアップしてみたいと思います。 リーディングリストをまとめてみましたが(※末尾)、振り返ってみると今年のテーマは、 「分断化した社会をど…

弱いつながり 検索ワードを探す旅(著:東浩紀)を詠みました

今日的な意味での『旅』の真価とはなんだろう? ストリートビューを開けば、世界中いたるところの街並みを、景色を、自分の居どころでたちどころに目にすることができる。SNSを除けば各スポットの映える写真・動画がアップされている。旅は2次情報を追いかけ…