保守とは何か(著:福田恆存、編:浜崎洋介)を読みました

福田恆存氏のまとまった一冊の本かと思ったらさにあらず。
いくつかの随筆をまとめた、短編集(?)的な書籍でした。

氏の保守観について直接言及しているのは、そのままズバリ、「私の保守主義観」というわずか5ページのごく短い小論。

いわく、保守とは、革新が自らの足下に広がり、自らが大事にしてきたものが脅かされていると感じるようになって立ち現れるもので、常に後手に回るものである。
改革の必要性の立証責任は革新にあり、そのため革新は主義を持っていなければならないが、保守にはその責任もないため、主義・イデオロギーを持つ必要などない。
保守派は改革の影響にせよ何にせよ将来の見通しを持たないものであり、積極的に先回りすべきではない。

 

現状のしきたりや掟に不満を持つ改革主義がまず立ち上がり、保守派は遅れてくるというのは、なるほどそうかもなぁと思いました。

それ以外のところについては、いわゆる政治的な保守論とは若干毛色が違っているように思います。

 

昨年「保守主義とは何か」(著:宇野重規)に始まり、日本の精神・思想のエッセンスは何だろう?という考察を続けてきました。今年の初めには神道の本を続けて読んでみたし、つい先日は丸山真男の「日本の思想」も読みました。

今改めてなんでこのテーマを追いかけてきたか振り返ってみると、日本が世界にある意味って何だろう?何をどういうやり方でやるのが、いや、むしろどういうあり方であるのが、日本自身にとっても世界にとってもハッピーなんだろう?ということについて、自分なりに答えを出したかったからだと思います。

Gゼロと言われる世界にあって、どう立ち位置をとるのか。
さすがにもう単純にキャッチアップするだけの目標を思い描くことも難しい。
(まだ日本の外側に比べればいくぶんましかもしれないけど)内外で社会の分断が広がっている。

いくら人口減に突入し縮んでいく傾向に入ってしまっているからといって、内側のことばかり考えていていいはずがない。
経済的には相当海外に依存しているわけだし。

自分の仕事に近い話で言えば、昨今右肩上がりと喧伝されているインバウンド旅行にしたって、これが今の世界の人に提供できる核心的な日本のバリューですというものに根ざした骨太で迫力のある内容のものは見出し切れていないように思うのです。

 

わずか半年ですが、渉猟の結果たどり着いた中間成果としては、過去の中にそのまま発掘してこられるような確固たる支柱はなさそうだな、ということ。
一方でヒントになりそうな財産としてはやはり思想的寛容性が高いということ。
これを異なる価値観・考え方・信仰の雑居に堕するにまかせず包摂性を高める方向に活かすことができれば、分断され断片化した世界・社会をブリッジし、ひとりひとり違うことがダイバーシティとして尊重される世界に近づけることに貢献できるんじゃないか?
そんな風に考えています。

それを実現するカギは、オープンであることと、直接のコミュニケーションを活発にすること。

うん、このあたりがこれからやるべきこと・やりたいことになっていくんだろうな。

 

保守とは何か (文春学藝ライブラリー)

保守とは何か (文春学藝ライブラリー)