セメントの記憶(監督・脚本:ジアード・クルスーム)を観ました
昨日、公開初日に観てきました。
破壊が続く故国シリアを逃れ、復興の建設ラッシュに沸くレバノンで働く移民労働者の苦難を描いた映画です。
配給会社や観客の方からは詩的な映像美との賛辞が送られてましたが、自分としてはぴんと張り詰めた画という印象でした。
身一つと言ってもいいような高所での建設作業。
戦いによる故国の破壊。
崩れた建物からの救出劇。
建築中のビル地下での暮らし。
いずれも今にも何か破綻が生じるんじゃないかと予感させられて、ずっと体が緊張したままでした。
地上に自分たちの居場所がない移民労働者たちの不安定さを身体感覚をもって観客に伝えようという演出効果を狙っていたならてきめんの効き目だったと言えるでしょう。
移民労働者たちは現場ビルの地下壕のようなスペースを賃料を払って間借りして生活しており、朝になるとそこから建設中の上層階へ出勤、夕方また戻ってくるという毎日を繰り返しています。移動の自由はなく、午後7時以降は地上に出ることも法律で禁じられています。
鑑賞後のQ&Aセッションで監督がおっしゃってましたが、長い人はこんな暮らしを5年も続けているそうです。
他に選択肢のない移民労働者たちをまるで奴隷のように扱っており、胸が潰れる思いがしたと。
故国で家族に危害が及んだり、建設現場から追い出されたりするのを恐れ口をつぐまざるをえないが故に、移民労働者たちの言葉をダイレクトに撮るのでなく、直面する現実を映像と音響といった手段で切り取り感性に訴えるように撮られた映画。
ひとりでも多くの方に届くといいなと願っています。