「いいね!」戦争(著:P・W・シンガー、エマーソン・T・ぶるっキング)を読みました

 TwitterFacebookといったSNSがいかに文字通り「兵器化」してきているか、現状を概説している本です。ロシアによるウクライナでの軍事作戦や、イスラエルパレスチナの紛争などを例にSNS上での情報戦が、今や新たな戦線として開かれている様子が描かれています。

著者はボットを使ったり、人力で架空のアカウントを多数運用したりして、SNS上に自分たちの有利になる(敵にを不利に陥れる)ようなフェイク情報を流布させたり、何が真実か分からなくなるような目くらましのための風説を流して荒らすような行為が常態化してきているといいます。それにより敵対する相手の国民や住民のあいだに分裂を生んだり、混乱を起こしたりすることが安全保障上の戦略としても正式に採用されてきているというのです。

 

こうした現実を前に、著者が提起する対応策は、ひとつにはSNSの運営者であるFacebook社やTwitter社が、自分たちはプラットフォーマーであってそこで流通する情報については「中立的」であるという立場に逃げ込むのではなく、自ら取り締まりにあたることが必要であるとしています。

また、ユーザーである1人1人についても、自分たちを取り巻く情報環境に操作しようという意図が満ち溢れていることを認識し、また分断・敵対するためでなく制度改善に向けた参加のためにSNSをより良く・より多く使うことが対抗策になると説いています。

 

 自分たちが何を見聞きし、認識するかという情報環境がこんなにも操作の対象として晒されていることは、本当に恐ろしいことです。そしてそれが実際に効果を上げてきたことがなおのこと怖い…。
今や情報リテラシーは学びたい人が学べばいいスキルのようなものではなく、自分の身や自分たちの社会を守るために欠かすことのできない基本的な姿勢のようなものになっているとひしひしと感じさせられます。もう交通安全と同じくらいのインテンシブさで社会への浸透を図っていってもいい時期がきているんじゃないでしょうか。 

 

「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア

「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア